診療支援
治療

投球障害肩
Throwing shoulder injury
杉本 勝正
(名古屋スポーツクリニック 院長〔名古屋市昭和区〕)

【疾患概念】

 投球障害肩は投球過多,フォーム不良,局所,全身的要因により肩関節に非生理的な過剰負荷が加わり,投球時に疼痛が生じる症例の総称である.

【病態メカニズム】

 発症メカニズムとして,①前方の緩みが関節内外のimpingementを生じさせ発症起点となる場合と,②後方関節包や筋肉の硬さ(後方タイトネス)が骨頭を後(前)上方に押し上げるために生じる2つのメカニズムが存在する(図11-23).①は前上方関節包(腱板疎部),上,中関節上腕靱帯などの弛緩,前上方関節唇の剥離などにより生じる.②は後方関節包や棘下筋,小円筋,三頭筋長頭などの後方筋群が硬化(後方タイトネス)し前後のバランスが大きく崩れ,骨頭中心が不安定になるために前方の損傷も惹起される.Bennett骨棘は三頭筋長頭,後方関節包の肩甲骨付着部での牽引により生じる骨棘である.この骨棘は後方関節包,小円筋,棘下筋を刺激し後方要素の硬さを増悪させる.このように肩関節の前後のバランスが崩れることにより障害へと進展していく.小児期はこれらの要素に加え骨端線や骨端核の障害も加わる.

【代表的肩関節投球障害】

(1)上腕骨近位骨端線離開(リトルリーグ肩)

 上腕骨近位骨端線が投球動作による過度の負荷により損傷,開大する.別名little leaguer's shoulderと称される.

(2)肩甲骨内上角炎,下角炎

 小児期の肩甲骨周囲の筋肉付着部は軟骨成分が多いため損傷を受けやすく,特に肩甲骨内上角,肩甲棘基部,下角,肩峰後外側角周辺の筋肉付着部に負荷が加わり圧痛や硬結,投球時痛を生じる.

(3)腱板損傷

 肩甲下筋断裂,損傷は頭側関節包面に不全断裂を呈する症例が多い.成長期では同部の付着部周辺の骨端線損傷も存在する.棘上筋腱は前方関節面と,棘下筋間の関節面に損傷をきたしやすい.

(4)上腕二頭筋長頭腱炎,脱臼,断裂

 若年では炎症のみの症例

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