【概要】
投球障害肩における手術の比率は1~5%程度であり,ほとんどの症例は腱板機能訓練や肩甲胸郭機能訓練,体幹や股関節など肩関節以外の機能低下部位に対する運動療法および投球フォーム上の問題点に対する保存的加療で復帰可能である.復帰困難例に対して最終手段として,損傷の部位や程度により鏡視下手術が行われているが,適応となる病態はインターナルインピンジメントによる腱板(不全)断裂や後方関節唇損傷,上方関節唇損傷〔SLAP(superior labrum anterior and posterior)lesion〕,腱板疎部損傷〔pulley lesion,MGHL(middle glenohumeral ligament)損傷〕,肩峰下インピンジメント,後方関節包拘縮(Bennett骨棘)などである.
1.適応
一般的には,運動療法を中心とした保存療法を3~6か月行い機能向上が得られても,解剖学的損傷のため障害以前のレベルへのスポーツ復帰が不可能な場合に手術加療を考慮するが,復帰までの期間および選手の社会的背景を考慮したうえで決定する.唯一,保存療法よりも手術療法を優先させるべき病態は,腱板不全損傷が深く,投球時のみならず日常生活動作でも疼痛を訴える症例であり,機能的問題点の改善に先立ち解剖学的修復を優先させる.
2.実施手順
通常のMRI検査では腱板不全損傷やSLAP lesionなどの診断が困難なため,術前に必ずMRA(MR関節造影)検査を行い,関節内病変の術前評価を行う.それでも腱板疎部損傷であるpulley lesionの診断は容易ではないため,投球時の前方痛や腱板疎部の圧痛の有無を確認しておく必要性がある.また,麻酔下での前方不安定性や可動域制限の左右差などをチェックする.基本的な手術手技はすべて関節鏡視下に行われるが,手技の基本はデブリドマンである.損傷腱板や関節唇の毛
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