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治療

トピックス リバース型人工肩関節置換術
Reverse Total Shoulder Arthroplasty
菅谷 啓之
(東京スポーツ&整形外科クリニック 院長〔東京都豊島区〕)

リバース型人工肩関節とは

 肩甲上腕関節は,股関節と同様な球関節でありながら骨頭に対してかなり小さい関節窩のために求心位が取りにくいため,腱板筋群が機能することで求心性が取れ,三角筋が作用して上肢が挙上可能となる.しかしながら,高齢者で一次修復不能な腱板広範囲断裂により上肢の自力挙上が困難な偽性麻痺の症例をよく経験する.従来,このような腱板広範囲断裂やcuff tear arthropathyは治療に難渋する場合が多かったが,これらの疾患に対する効果的治療法としてリバース型人工肩関節が,2014年4月わが国に導入された.現行のリバース型人工肩関節は,1986年Paul Grammontにより開発されたsemi-constrainedタイプの人工肩関節であり,腱板広範囲断裂では上方に移動してしまった肩甲上腕関節の回旋中心を,内側かつ下方に移動させる術式である(図11-16図11-17).回旋中心の内方化により,上肢挙上時の関節窩コンポーネントにかかる剪断力が軽減されルースニングが起こりにくくなると同時に,下方化により三角筋の作用が増大し,効果的に上肢を挙上することができるようになる.

適応疾患

 原則として腱板機能の再建が不可能な症例に行われる術式であり,日本整形外科学会のガイドラインによれば,欧米での10年20年成績におけるサバイバル率を考慮して,一次修復不能な腱板広範囲断裂で初回手術に行う場合には原則70歳以上の高齢者が適応となる.しかしながら,腱板手術の術後再断裂例において修復術不可能の場合には70歳未満にも使用可能とされている.また,結節の骨癒合が期待できない高齢者の上腕骨近位端4パート骨折も良い適応である.また,骨折続発症,リウマチ肩,アナトミカル型人工肩関節のrevision,関節窩骨欠損が大きい一次性変形性肩関節症,腫瘍など,ほかに有効な方法がない疾患に関しては

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