リバース型人工肩関節とは
肩甲上腕関節は,股関節と同様な球関節でありながら骨頭に対してかなり小さい関節窩のために求心位が取りにくいため,腱板筋群が機能することで求心性が取れ,三角筋が作用して上肢が挙上可能となる.しかしながら,高齢者で一次修復不能な腱板広範囲断裂により上肢の自力挙上が困難な偽性麻痺の症例をよく経験する.従来,このような腱板広範囲断裂やcuff tear arthropathyは治療に難渋する場合が多かったが,これらの疾患に対する効果的治療法としてリバース型人工肩関節が,2014年4月わが国に導入された.現行のリバース型人工肩関節は,1986年Paul Grammontにより開発されたsemi-constrainedタイプの人工肩関節であり,腱板広範囲断裂では上方に移動してしまった肩甲上腕関節の回旋中心を,内側かつ下方に移動させる術式である(図11-16図,図11-17図).