診療支援
治療

上腕骨顆上骨折
Supracondylar humerus fractures
清水 隆昌
(奈良県立医科大学 学内講師)

【疾患概念】

 小児の肘周辺の骨折の約2/3は上腕骨顆上骨折であるとされ,小児の全骨折の約3%を占める.好発年齢は5~7歳で,近年はスポーツ活動を行う女児の増加に伴って,発生率に性差はなくなってきている.受傷側は左側,非利き手に多いとされる.

【病態】

 上腕骨顆上骨折は,転倒または高所からの転落の際に,肘関節を伸展した状態で手をついて生じることが多く,骨折部の末梢部位が後方に転位する伸展型骨折が大部分(97~99%)を占める.転位が大きな場合は,鋭い骨折端が周囲の神経血管を損傷しやすく,合併症の原因となる.

【臨床症状】

 受傷側の肘関節周囲の痛みや腫脹,外観上の変形があることが多い.小児の上腕骨顆上骨折は合併症が多く,急性期では神経麻痺,循環障害を伴うコンパートメント症候群やVolkmann拘縮,長期では内反肘などの変形治癒が発生しやすいのが特徴である.成人では比較的高齢者に多くみられ,関節内骨折である通顆骨折となりやすい.神経麻痺や循環障害は少なく,変形治癒や偽関節が主となる.


問診で聞くべきこと

 高エネルギー外傷の場合は,強く痛みを訴える肘関節周囲以外の外傷を想定しておくことが望ましい.X線撮影の前に重要なのが,神経麻痺,循環障害の評価である.小児では,痛みが伴う場合は特に知覚障害などの理学的所見を聴取しにくいが,合併症の出現の時期を正確に評価するために重要となる.


必要な検査とその所見

 神経麻痺は正中神経,橈骨神経が多い.尺骨神経麻痺は医原性の損傷以外は比較的まれである.前骨間神経(正中神経の分枝)麻痺は頻度が高いとされ,tears drop signの評価が有用である.

 循環障害の評価として,橈骨動脈の拍動や毛細血管再充満時間(capillary refill time;CRT)をまず評価することが重要である.動脈の拍動を触知困難な場合は,超音波カラーDopplerなどが有用

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