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治療

上腕骨頭の無腐性壊死
Aseptic necrosis of the humeral head
井上 和也
(奈良県立医科大学 助教)

【疾患概念,病態】

 上腕骨頭の無腐性壊死は比較的まれな疾患であり,上腕骨頭への栄養血管が閉塞し骨壊死を生じる疾患である.全骨壊死のなかで約10%であるといわれており,好発年齢は50~55歳である.原因は特発性と二次性に分けられる.二次性はさらに外傷性と非外傷性に分けられる.外傷性は上腕骨近位端骨折,肩関節脱臼などの後に発生する.非外傷性の原因としてはステロイド性が最も多く,アルコール性,潜函病,鎌状赤血球症,Gaucher病なども挙げられる.ステロイド性は,ステロイド全身投与を受けた患者の約5%に起こるとされており,疼痛などの自覚症状はステロイド投与後6~18か月で出現するとされている.ステロイド投与を受けた既往のある患者で肩痛を訴える場合には必ず鑑別疾患に挙げなければならない.

【病型分類】

 分類は大腿骨頭壊死に対するFicat-Arlet分類をもとにしたCruess分類が頻用される.

Stage Ⅰ:単純X線では異常を認めない.

Stage Ⅱ:骨硬化像や骨嚢胞は存在するが,上腕骨頭の圧壊および骨折は認めない.

Stage Ⅲ:上腕骨頭に微小な圧壊や骨折(crescent sign)を認める.

Stage Ⅳ:関節症を伴う広範な圧壊を認める(図12-6).

Stage Ⅴ:関節窩側にも関節症を認める.


診断のポイント

 理学所見は非特異的であり,外傷やステロイド投与の既往などから本疾患を疑うが,確定診断には画像検査が必要となり,単純X線画像でCruess分類に従って診断する.しかしStageⅠにおいては単純X線画像では異常はないため,本疾患を疑う場合にはMRIを施行すべきである.また,壊死範囲や軟骨の状態の診断にもMRIが有用である.


治療方針

 Cruess分類Stage Ⅰ,Ⅱにおいては投薬,安静,リハビリテーションなどの保存療法が選択されるが,疼痛が改善しない場合は手術療法が選択さ

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