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治療

上腕二頭筋腱・三頭筋腱皮下断裂
Closed rupture of biceps long head or triceps brachii
船越 忠直
(慶友整形外科病院慶友肩関節センター センター長〔群馬県館林市〕)

【疾患概念】

 上腕二頭筋および三頭筋は二関節筋であり,肩関節安定性および前者は主に肘屈曲筋,前腕回外筋として,後者は肘伸展筋として働く.退行性の変化に加え,外傷,繰り返すストレスにより腱断裂が生じる.これまでは中高年の重労働者,スポーツ愛好家,ステロイド使用歴などがリスクとされていたが,近年スポーツ愛好家やボディビルダーなどにおいては上腕二頭筋,三頭筋筋力が強くなり若年者でも比較的多く報告されるようになった.疼痛が軽微な場合には自覚症状が少ない場合もあるが,初期発見が遅れると疼痛残存,筋力低下(特に前腕回外,肘伸展力)を残し,治療が困難となることもある.


1.上腕二頭筋腱皮下断裂

【臨床症状または病態】

 上腕二頭筋腱長頭(近位部,肩関節部)は,上腕骨結節間溝にて大きく走行を変えるため損傷されやすい.上腕遠位(肘関節部)での上腕二頭筋腱は,橈骨粗面に付着し大きく走行を変えるが,肘前面の腱膜と強く結合しており,より大きな力に耐えうる構造になっている.

 上腕二頭筋長頭腱は完全断裂すると,上腕部での筋腹の移動(いわゆるポパイサイン)が見られることがある.不全断裂では肩関節痛の原因になり,結節間溝での腱固定術または腱切離術が行われることがある.上腕二頭筋長頭腱切離後も,筋力低下および肩肘関節の機能不全を認めないという報告が多いことから,コスメテッィクな問題を除けば大きな機能障害はないと考えられている.しかし,欧米を中心に,高齢であってもコスメティックな問題を主訴に,手術加療を行うこともある.遠位上腕二頭筋腱断裂は,重労働者やスポーツ選手においては痛みを残し,完全断裂例では回外筋力が著明に低下する場合があり,手術加療が選択されることが多い.


診断のポイント

 問診にて外傷,ステロイド内服・注射の有無,スポーツ歴などを確認する.視診にて内出血,筋腹の膨隆と萎縮,触診にて圧痛と腱陥凹が重要である.

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