診療支援
治療

肘頭骨折
Olecranon fracture
辻 英樹
(羊ヶ丘病院 医長〔札幌市厚別区〕)

【疾患概念】

 一般的に2種の受傷機転,すなわち肘からの転落や肘頭への直達外力,あるいは肘屈曲位での強い上腕三頭筋の収縮によって生じる.より大きな外力が加わった場合は,脱臼骨折を生じる(肘頭脱臼骨折).

【臨床症状】

 肘関節部の腫脹と圧痛を強く認める.骨折部に転位がある場合は上腕三頭筋筋力が伝わらず肘伸展が不能になる.


問診で聞くべきこと

 受傷機転,受傷肢位を聞き出せれば,診断の補助となる.


必要な検査とその所見

 単純X線側面像を正しく撮影することで骨折の判定は容易である.肘頭骨折の範囲や粉砕,陥没の程度,合併する橈骨頭骨折,鉤状突起骨折の精査にはCT検査が有用である.


治療方針

 骨折部の転位が少なく安定しているもの,受傷時肘関節自動伸展が可能なものは保存治療が,それ以外は手術療法が適応となる.


保存療法

 肘関節45~90°屈曲位でのギプス固定を行う.術後数日の再X線撮影により骨折部の転位が生じていなければ,2週前後の固定後肘関節自動運動を開始する.特に高齢者では3週以上のギプス固定は関節拘縮を惹起するため行わない.


手術療法

 2本の平行なKirschner鋼線と軟鋼線で締結する,tension band wiring法が一般的に行われる(図13-2).粉砕骨折や骨折が鉤状突起の遠位に及ぶ(時に脱臼骨折を呈する)症例では,滑車切痕の正確な整復固定を要するため,ロッキングプレート固定の適応となる.近年多くの解剖学的プレートが開発されている.


患者説明のポイント

 尺骨神経不全麻痺を合併することがあること,可動域制限や偽関節,外傷性変形性関節症を生じる可能性を説明する.


リハビリテーションのポイント

 早期の可動域訓練開始が重要であるが,自動運動を主体に行い,暴力的な他動運動は禁忌である.訓練に際しては疼痛コントロールが適切になされていることが望ましく,セラピストはリハビリテーションの進捗状況を積

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