【疾患概念】
肘関節伸展位,前腕回外位における上腕骨軸と尺骨軸のなす角をcarrying angle(肘外偏角)とよぶ.男性では正常値は10~14°の外反位,女性は13~16°の外反位である.Carrying angleが減少し内反位をとる肘を内反肘(図13-5図),carrying angleが増加し強い外反位をとる肘を外反肘(図13-6図)とよぶ.
内反肘は,小児の上腕骨顆上骨折後の変形治癒によるものの頻度が高い.実際には内反変形に,過伸展と内旋の2つの変形が合併する.整容的な問題と屈曲制限があることが多い.高校生以降の年齢で,二次的に外側尺側側副靱帯の機能不全が生じ,肘関節外側回旋不安定性を訴える例がある.また,遅発性尺骨神経麻痺を発症することもある.
外反肘は,小児の上腕骨外顆骨折後の偽関節によるものが多い.小児期には変形はあるものの無症候性のことが多いが,成人以降に高い頻度で,遅発性尺骨神経麻痺が発生する.また,不安定に伴う変形性肘関節症が発生する.
問診で聞くべきこと
外傷の既往と治療歴を確認する.整容,機能上の問題点を問診する.肘関節の疼痛や不安定感の有無,環・小指のしびれ,握力低下など尺骨神経麻痺に伴う症状の有無を確認する.
診断のポイント
Carrying angleを観察し,健側と比較する.内反肘であれば,単純X線で上腕骨顆上骨折変形治癒,滑車形成不全などが認められる.外反肘であれば,上腕骨外顆偽関節,橈骨頭脱臼,橈骨頭骨折(変形治癒)などが認められる.
専門病院へのコンサルテーション
経過観察で変形が改善することはない.診断,治療方針について迷うようであれば,早期に専門病院に紹介する.
治療方針
【1】上腕骨顆上骨折変形治癒に伴う内反肘
変形の程度が大きく,整容が問題になる例では,上腕骨の矯正骨切り術を行う.内反,過伸展,内旋の3変形をすべて矯正するか,内反・過