診療支援
治療

変形性肘関節症
Osteoarthritis of the elbow
稲垣 克記
(昭和大学 教授)

【疾患概念】

 変形性肘関節症はスポーツ,ことに投球動作を行う野球〔離断性骨軟骨炎(osteochondritis dissecans;OCD):一般に野球肘〕,剣道,槍投げなどの選手が10年ほど経過し発症する.職業上,圧縮空気を使用する者などにもみられる.男性に多く,比較的若い年齢層に好発する.これは,肘関節部に加わる軸圧や外反ストレスが反復し,長い間に関節軟骨の変性を起こすとされ,小外傷(衝撃)の繰り返しによる二次性変形性関節症ともいえる.原因が特定できない変形性肘関節症を一次性関節症というが,一般には二次性変形性肘関節症に手術療法が必要となることが多い.

【分類】

(1)一次性変形性関節症

 原因が特定できない.一般には変形性肘関節症とはこの一次性を指していう.

(2)二次性変形性関節症

 野球その他の投球動作を要するスポーツ愛好家,離断性骨軟骨炎,骨折など外傷後による.また関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA),結核などによる炎症性関節炎に伴う続発性変形性関節症もある.これらは比較的若い年齢で発症する.

【臨床像】

①一次性変形性肘関節症は男性に好発し,一般に初発症状は50歳頃であるが20~65歳とバリエーションがある.一次性の本疾患で有症状となるのは1~2%である.一次性の60%の症例に,杖や車椅子または職業上の反復する肘使用の既往がある.80~90%は利き腕に生じ,両側例は25~65%と報告されている.

②肘の伸展障害で受診することが最も多いが,疼痛と関節可動域制限は概して軽度で機能的可動域(30~120°)にとどまることが多い.肘伸展終末時痛はほぼ全例に認めるが,屈曲終末時痛を訴えるものは50%程度である.遊離体合併例を除き関節可動域中の運動時に疼痛を訴えることは少ない.

③回内外障害を認めることはまれである.X線上,腕橈関節の変形性関節症はあっても軽度で

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