【疾患概念】
肘関節不安定症とは何らかの病態の結果,肘関節の動的バランスが破綻し,関節面が適合性を失って(亜)脱臼を呈する,あるいは呈しやすい状態,を指す.「靱帯損傷」の項で述べたように,肘関節には内外両側に側副靱帯が存在し,これが損傷されるとそれぞれ外反および内反方向に不安定性が生じる.ただ,単純に二次元的に内外側の不安定症が生じるわけではなく,靱帯損傷・機能不全に骨傷や回旋方向の緩さなどが加わって種々の不安定症が生じる.神経麻痺や先天性素因,炎症性疾患の結果なども,肘関節不安定症をきたす原因となりうる.
【病型,分類,病態】
上記のように,種々の病態で肘関節不安定症は起こり得るが,その代表は靱帯損傷など外傷に起因するものであり,結果的に靱帯の機能不全を呈した病態である.
(1)外反不安定症(valgus instability)
内側側副靱帯(medial collateral ligam