診療支援
治療

Monteggia骨折
Monteggia fracture
尼子 雅敏
(防衛医科大学校病院リハビリテーション部 教授)

【疾患概念】

 Monteggia骨折は,尺骨骨折や急性塑性変形(acute plastic bowing)などに橈骨頭脱臼を合併した外傷である.尺骨の変形に伴って骨間膜で結合された橈骨も変形をきたし,輪状靱帯を損傷して橈骨頭が尺骨の凸状変形方向に脱臼する.

【病型・分類】

 脱臼方向によってBado分類が用いられる(図14-3).


診断のポイント

 初診時に尺骨骨折は気づくものの,橈骨頭脱臼が見逃されることが多い.尺骨骨折を認めた場合は,必ず正確な単純X線肘関節2方向を追加し,橈骨頭脱臼の有無を確認する.正常では,橈骨長軸がいかなる撮影肢位でも上腕骨小頭の中心に向かうはずである.中心から外れていれば橈骨頭脱臼を疑う.逆に橈骨頭脱臼に気づいた場合は,明らかな尺骨骨折がなくても急性塑性変形を疑い,単純X線前腕全長2方向を追加する.前腕側面像で,尺骨背側骨皮質の近位端と遠位端を結んだ線から尺骨弯曲頂点までの距離が1mmを超えると,変形ありと診断する.尺骨骨折が肘頭部であることもある(Hume骨折).


治療方針

 尺骨骨折を徒手整復することで橈骨頭を整復する.小児では局所または全身麻酔下に,徒手整復が可能であれば外固定で保存療法を行う.一方,成人は保存療法では整復位保持が困難で,手術を要することが多い.整復位保持ができなければ手術的に尺骨骨折の整復,プレート固定することで橈骨頭を整復させる.橈骨頭が整復されない場合は,関節包や輪状靱帯などが整復障害因子となっていることがあるので,腕橈関節を展開して障害因子を除去する.強固な固定と整復位が保持されていれば,術後2~3週以内に自動運動を開始できる.


合併症と予後

 橈骨頭脱臼が見逃されて放置された場合は,尺骨矯正骨切り術や創外固定など橈骨頭の整復に難渋するため,受傷直後の正確な診断・治療が重要である.橈骨頭の脱臼に伴い後骨間神経麻痺が生じることもある

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