【疾患概念】
胎生期の上肢分化障害による近位橈尺関節の完全癒合あるいは線維性癒合のために,前腕の回旋障害が生じる.男性に多く,約半数は両側罹患である.家族歴,全身の合併奇形がみられることがある.2~4歳時に,箸,茶碗の持ち方がおかしい,「頂戴の動作ができない」などの訴えで受診することが多い.
【頻度】
小児の上肢先天異常疾患のなかでは比較的多い.
問診で聞くべきこと
患児の具体的な日常生活動作(activities of daily living;ADL)障害.
診断のポイント
前腕を他動的に回内・回外運動し,回旋不能であることを確認する.
橈尺関節の強直角度は回内0~90°(平均回内40°)と個人差がある.
線維性癒合の場合は,回旋運動の制限が認められる.
手関節部での代償的回旋運動があるため,手部を回旋させる診断法は不正確である.肘関節90°屈曲位で,橈骨茎状突起と尺骨頭を挟み前腕遠位部で他動運動させて回旋角度を計測する.
肘関節の伸展は軽度制限される例が多い.
少年期に,突然の肘関節痛と伸展障害で受診する場合は,本症の橈骨頭前方脱臼型が疑われる.
両側の肘関節~手関節を含む正面,側面の2方向X線撮影を行う.
橈骨頭が後方に脱臼する例が約半数であるが,前方脱臼例,脱臼がない例などもある.
治療方針
手術以外の治療方法はない.両手罹患か片側罹患か,利き手罹患か非利き手罹患か,完全強直か部分強直か,強直の前腕回旋角度などを考慮して,手術適応と手術方法を決定する.手術には,前腕の回旋骨切り術と癒合部解離術がある.線維癒合例,中間位強直例では,ADL障害は少なく手術適応は限られる.
手術療法
回旋骨切り術は,30°以上の回内強直例に適応がある.橈骨骨幹部で骨切りし,軽度回外位に回旋しギプス固定する.
癒合部解離術は,回旋運動の獲得を希望する例に適応がある.橈尺骨の癒合部を解離し,間隙に遊