診療支援
治療

月状骨周囲脱臼,月状骨脱臼
Perilunate dislocation, Lunate dislocation
松井 雄一郎
(北海道大学大学院歯学研究院 准教授)

【疾患概念】

 月状骨周囲の靱帯損傷や手根骨骨折により月状骨周囲の手根骨が一塊となり,背側あるいは掌側に脱臼するのが月状骨周囲脱臼,月状骨のみが掌側へ脱臼するのが月状骨脱臼である.

【病態】

 月状骨周囲脱臼や月状骨脱臼は,高所からの転落やオートバイによる交通事故などにより,手関節へ大きな外力(特に手関節背屈と尺屈強制)が加わることによって生じる.舟状骨骨折や橈骨茎状突起骨折,正中神経麻痺などを合併することもあるため注意が必要である.発生自体は比較的まれであるため見逃されることもあり,治療に難渋する例や,手根不安定症に進行する例が散見されており,早期の正確な診断と靱帯の解剖学的な修復が重要である.

 月状骨周囲脱臼は,外力により月状骨周囲の靱帯損傷や手根骨骨折が生じて,月状骨のみが橈骨と正常な位置関係を保ち,月状骨周囲の手根骨が一塊となり背側あるいは掌側に脱臼した状態である.一方,月状骨脱臼は,月状骨のみが掌側に脱臼して,月状骨周囲の手根骨は橈骨と正常な位置関係を保つ.Mayfieldによると,これらは独立した病態ではなく,月状骨周囲脱臼の最終段階として月状骨脱臼があるとしている.

【臨床症状】

 手関節の腫脹や疼痛を認める.ただし,月状骨脱臼では腫脹や疼痛が比較的軽度な場合もあり注意を要する.


必要な検査

 手関節の単純X線画像(正面,側面)が必須である(図15-5).手根骨相互の位置関係や骨折の有無などの評価には,CT画像も有用である.


診断のポイント

①単純X線正面画像では,手根骨配列を近位・遠位手根骨の骨皮質を結ぶライン(いわゆるGilula's lines)の乱れを観察する.単純X線側面画像において,月状骨周囲脱臼では月状骨と有頭骨の位置関係,月状骨脱臼では橈骨と月状骨の位置関係を観察する.

②CT画像では,これらの手根骨相互の位置関係や合併する舟状骨骨折,有頭骨骨折,三角骨骨折,橈

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