診療支援
治療

三角線維軟骨複合体 (TFCC) 損傷
Triangular fibrocartilage complex (TFCC) injury
安部 幸雄
(山口県済生会下関総合病院 副院長〔山口県下関市〕)

【疾患概念】

 三角線維軟骨複合体(TFCC)は解剖学的に実質部と周辺部に区分でき,前者は手関節尺側において衝撃緩衝体として,後者は遠位橈尺関節(distal radioulnar joint;DRUJ),尺骨手根関節の安定性に寄与する靱帯としての機能を有する.その損傷は手関節尺側部痛やDRUJ不安定症の原因となる.

【病態】

 急性損傷と慢性(陳旧性)損傷がある.明らかな外傷ののちに疼痛が生じれば急性損傷と診断できるが,はっきりとしないものもある.慢性例は尺骨突き上げ症候群を伴うことも多い.分類には従来Palmer分類が用いられてきたが,昨今損傷の多様性が明らかとなり種々の分類が提唱されている.その一例であるオリジナル分類を記載する(表15-1).無神経野である実質部の損傷が疼痛を生じる原因はTFCC全体に生じる歪み,断裂片の挟み込みなどが考えられる.周辺部損傷では程度の差はあれDRUJの不安定性を認める.特に尺骨小窩断裂では尺骨頭の亜脱臼を認めることがある.


問診で聞くべきこと

 転倒時の手関節強制背屈や強い力での回内外動作を行った後に生じたなどの受傷機転を聴取する.どういう動作,肢位で疼痛が生じるのか,手関節が抜けるような不安定感を感じるか,生活のなかで何がどの程度不自由なのかは治療の必要性を決定するのに重要である.


必要な検査とその所見

 単純X線撮影では,骨折の有無,DRUJの開大,尺骨のバリアンスと関節症変化の有無などをチェックする.CTではこれらに加え回内外時の尺骨頭の亜脱臼の有無も確認する.MRIはTFCC断裂の診断において感度の高い検査であるが,断裂の部位,性状を把握するには経験を要する.関節造影は損傷部位の確認とともに局所麻酔薬を添加することにより,疼痛の一時的緩和を確認することで診断の一助となる.これら画像所見は,後述の理学所見と同様,健側との対比が重要である.


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