診療支援
治療

手根管症候群
Carpal tunnel syndrome
内山 茂晴
(岡谷市民病院 部長/副院長〔長野県岡谷市〕)

【疾患概念】

 手根管内では正中神経,手指および母指屈筋腱とそれらの周辺にある滑膜が占拠している.手根管症候群は,手根管部で正中神経が何らかの原因により圧迫される,正中神経麻痺である(第14章「正中神経麻痺」においても記載).

【病態】

 特発性と二次性に分けられ,80%は特発性で80%は両側に発症する.特発性では,加齢,繰り返す動作による滑膜や腱の変性肥厚,それに続く手根管内容積と圧の増大が原因である.二次性では橈骨遠位端骨折などの手関節部外傷,脂肪腫やガングリオンなどの腫瘤,手根管内滑膜の変性肥厚や炎症をきたす全身疾患,すなわち人工透析,関節リウマチ,膠原病,糖尿病,アミロイドーシスなどがある.本邦における有病率は50歳以上で約5%(女7%,男2%)である.


問診で聞くべきこと

 初期には手指のしびれや痛みを訴えることが多く,携帯電話を持って話をする,新聞を両手で持って読むなどの動作,あるいは夜間睡眠時に増悪する.夜間痛は自然緩解することが多く,麻痺というより正中神経の一過性の虚血によるものである.圧迫が長期に及ぶと神経線維がWaller変性し,持続性のしびれや母指対立障害による巧緻運動障害が出現する.ばね指が約20%に合併する.


必要な検査とその所見

 正中神経領域の感覚障害,Tinel様徴候陽性,Phalenテスト陽性,病期が進行すると母指球萎縮による母指対立運動障害が認められる.検査は手関節部単純X線像のほか,神経伝導速度測定が重要であり,運動神経終末潜時(正常4.5ms以下),感覚神経伝導速度(正常45m/s以上)の遅延が認められる.近年画像診断が進歩しており,特に超音波画像診断は簡便であることや侵襲がないことからきわめて有用である.正中神経の横断面積が手根管入口部で増大している(正常の横断面積6~10mm2).また,手根管内占拠病変の検出にも有効である.MRIも同様である

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?