診療支援
治療

PIP関節脱臼骨折
Fracture-dislocation of the PIP joints
矢島 弘嗣
(市立奈良病院 名誉院長〔奈良市〕)

【疾患概念】

 近位指節間(proximal interphalangeal;PIP)関節脱臼骨折は背側への脱臼が大半で,スポーツにより受傷することが多い.PIP関節が軽度屈曲位で,指尖部から長軸方向に外力が加わると中節骨基部掌側に三角形の骨折が生じ,その骨折部は通常の位置にとどまり,基節骨が背側に脱臼するというパターンを示す.掌側脱臼骨折は非常にまれである.


診断のポイント

 受傷機転とPIP関節の腫脹,背側への突出,可動制限により本疾患が疑われる.X線検査でほぼ確定診断がつくが,その際正確な側面像が必須である.関節の陥没や掌側骨片の粉砕を伴う場合は,CTが有用である.過伸展損傷による掌側板骨折とは治療法が異なるために,鑑別しておかなくてはならない.通常この場合は脱臼を伴っていない.


治療方針

 掌側骨片の大きさが関節面の1/3以下である場合は,原則保存療法の適応である.次に整復位の安定性で治療方針が変わるので,①伸展位で安定している,②45°の屈曲位で整復が安定している,③45°の屈曲位でも再脱臼する,の分類が重要である.さらに陥没骨折があり,関節面の不適合を伴う症例に対しては手術を考慮すべきである.


保存療法

 骨片が関節面の1/3以下で,かつ軽度屈曲位で整復が安定しているものに対しては,PIP関節屈曲45~60°で背側にシーネをあてて3~4週間固定する.


手術療法

 45°の屈曲位でも再脱臼を生じるようなものは,掌側の骨片が小さくても,伸展をブロックするための鋼線を背側から入れる(extension block法).骨片が大きい症例では,extension blockを行う,あるいはその位置でPIP関節を仮固定して,骨片をとらえるように掌側から鋼線を刺入して,骨折部を固定する.少し陳旧性になった症例や整復が不安定な症例に対しては,Robertsonの3方向牽引が以前に行われていたが,

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