【疾患概念】
皮膚裂傷がなく,手指屈筋腱が断裂した場合を皮下断裂という.
【病態】
皮下断裂の原因としては急激な筋収縮により生じる断裂と,特別な外力がなく通常使用での断裂に大きく分けられる.実臨床では後者が多い.前者では筋腱移行部での断裂あるいは腱停止部での裂離であり,腱実質部の断裂はほとんどない.後者は腱実質部が滑走中に骨棘などと接触すると摩擦が上がり,それを繰り返すことにより断裂に至る.後者は手関節レベルでの病変による断裂が多いが,深指屈筋(flexor digitorum profundus;FDP)腱のほうが浅指屈筋(flexor digitorum superficialis;FDS)腱よりも関節に近いところを滑走するため,より断裂頻度が高い.
【原因】
頻度の高いのは小指FDP腱断裂である.有鉤骨鉤偽関節部との摩擦,偽関節がなくとも有鉤骨基部との摩擦で断裂することがある.ほか豆状三角骨関節症,遠位橈尺関節(distal radioulnar joint;DRUJ)症に伴う骨棘形成が原因となる.
中指,環指FDP腱断裂はDRUJ関節症や,進行期のKienböck病(分節化した骨片が関節外へ突出),橈骨遠位端骨折変形治癒(近位骨片の掌側断端部)を考える.示指FDP腱断裂は,橈骨遠位端骨折変形治癒や進行期のKienböck病を考える.長母指屈筋腱断裂は,橈骨遠位端骨折変形治癒や橈骨遠位端骨折手術後で掌側ロッキングプレート設置位置の不良,舟状骨偽関節を考える.
また,ばね指や屈筋腱腱鞘炎に対して,A1腱鞘内への副腎皮質ステロイド薬注射(特にトリアムシノロンアセトニド薬)後に屈筋腱断裂が生じることがある.
診断
視診上,安静時の肢位で罹患指は隣接指より伸展位にある.FDS腱のみが断裂しても手指の自動屈曲は可能である.FDP腱が断裂すると遠位指節間(distal interpha
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