【疾患概念】
母指あるいは示指(ときに中指)の中手指節(metacarpophalangeal;MP)関節部が,特定の肢位でロック(固定)されたように動かせなくなる状態を指す.
【病態】
母指ロッキングは,MP関節の過伸展強制による掌側板損傷が誘因となって発生する.掌側板は中枢に位置する脆弱な膜様部で断裂する.掌側板に付着する橈側側副靱帯の副靱帯(accessory ligament)は,過伸展変形により断裂した掌側板とともに末梢に移動する.橈側の副靱帯が中手骨の掌側結節(隆起)を乗りこえると,ロッキングが生じる(図16-13図).
示指ロッキングは指を握りこんだ際に発生する.中手骨頭掌側の骨棘に,橈側の副靱帯が引っかかりロッキングが生じる.
【臨床症状】
母指では過伸展位で,示指(中指)では屈曲位でロッキングが生じる.示指(中指)は伸展位をとることができないが,屈曲は可能である.