【疾患概念】
両側の示指から小指の中手指節間(metacarpophalangeal;MP)関節が屈曲,尺側偏位を呈する変形(図16-17図)で,風車の翼を思い浮かべさせることから風車翼状手とよばれる.Freeman-Sheldon症候群や遠位関節拘縮症に合併する.
【病態】
Zancolliらは変形の原因として伸筋腱の形成不全,MP関節での伸筋腱亜脱臼,掌側皮膚・靱帯の短縮を報告している.掌側の靱帯に生じた異常の位置の違いにより,尺側偏位が優位となる症例と,屈曲変形が優位になる症例があると考えられる.
【臨床症状】
示指から小指のMP関節の自動伸展は制限されているが,他動的には伸展が可能で,自動屈曲は制限されていない.母指の内転屈曲変形も合併しており,母指のMP関節は皮膚性の拘縮を伴い,他動伸展が不能であることが多い.Freeman-Sheldon症候群合併例では,下顎の低形成や小口症を認める.内反足や垂直距骨といった足部の変形を合併することもある.
鑑別診断で想起すべき疾患
先天性多発性関節拘縮症では,手指は軽度屈曲位で伸展拘縮が存在する.
診断のポイント
示指から小指MP関節の自動伸展不能,および母指の内転屈曲拘縮の存在を確認する.
専門病院へのコンサルテーション
生後6か月程度までは握り母指様の手の変形を有する小児がいるため,家族に他動的に指の伸展を行うよう指導し,経過をみる.生後6か月以降に上記の変形を確認した段階で,手外科専門医へのコンサルテーションを考慮する.
治療方針
【1】保存療法
保存的治療として,装具の作製・装着ができる時期になったら手関節,手指伸展位の装具両方を開始するが,矯正不能である例が多い.
【2】手術療法
①MP関節掌側の横皮切で拘縮解離を行ったのち,全層植皮を行う.あるいはBrand法に準じて第1指間から母指掌側にかけて,示指橈背側から回転皮弁を行う.母指の
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