診療支援
治療

母指形成不全
Thumb hypoplasia
堀井 恵美子
(関西医科大学 理事長特命教授)

【疾患概念】

 母指を含めた上肢橈側の形成障害は,橈側列形成障害として,日手会分類(日本手外科学会の先天異常分類)の縦軸形成障害に分類される.母指機能の障害だけでなく,橈骨を含めた肘・手関節の形成障害を合併することが多い.心疾患・脊柱異常などの合併異常がみられることも多い.

【病態・臨床症状】

 両側罹患が多い.母指は完全欠損から,軽度の筋低形成まで,その形成不全の程度に応じて分類される(Blauth分類)(図16-19).typeⅠは筋腱の軽度の低形成がある症例で,骨の異常はほとんどなく,再建術を必要としない場合が多い.typeⅡは第1指間の狭小化と母指球筋の低形成があり,対立運動障害が明らかとなる.typeⅢでは,さらに長母指屈筋・伸筋の低形成による可動域制限,中手指節(metacarpophalangeal;MP)関節の不安定性も顕著となる.この型では手根中手(carpometacarpal;CM)関節の安定性の有無によりA/Bに分類する.Type Ⅳでは中手骨は欠損するため,いわゆる浮遊母指の形状を呈する.Type Ⅴでは,母指は完全欠損である.


問診で聞くべきこと

 家族性の症例もみられるので,家族歴の細かい聴取と,全身の合併症の有無を把握する.


必要な検査とその所見

 X線にて,両側手および上肢の骨格を評価し,肩関節を含めて上肢の可動域・筋力評価を行う.


診断のポイント(鑑別診断)

 心疾患・脊椎異常・気管および消化器の異常などを合併する場合,VATER連合,Holt-Oram症候群,TAR症候群などと称され,他科との連携も必要である.


専門病院へのコンサルテーション

 合併症を含め総合評価をするため,早期に専門医への紹介が必要である.


治療方針と方法

【1】保存療法

 中等度以上の橈骨形成障害を合併する場合は,内反手変形があるので,早期に手関節に対するスプリント矯正を開始する.母指の内

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