診療支援
治療

リウマチ手指変形
Deformities of the rheumatoid hand
岩本 卓士
(慶應義塾大学 専任講師)

【疾患概念】

 手指関節は関節リウマチにおける関節炎の好発部位であり,病初期から生じた滑膜炎が持続することにより,多彩な外観上の変形を生じる.代表的な変形には尺側偏位,ボタン穴変形,白鳥のくび(スワンネック)変形がある.

【病態】

 関節リウマチによる滑膜炎が持続すると関節が腫脹し,関節周囲の支持組織である関節包,靱帯,腱にゆるみが生じる.さらに重量物の把持,つまみ動作という機械的負荷が加わることで変形を生じる.多くの変形は,伸筋腱,骨間筋,虫様筋によって構成される指伸展機構のアンバランスによって生じるため,一度生じた変形は放置することで徐々に増悪する傾向がある.関節リウマチの手指変形は軟部組織の損傷に起因しており,画像上の骨関節破壊が生じる以前から始まっていることに注意が必要である.


問診で聞くべきこと

 手指変形によって生活上何が困っているかを,患者によく聴取する必要がある.関節リウマチの手指変形は長期の経過で徐々に進行しているため,外見上は高度の変形であっても,患者は上手に対応して手を使用できていることも少なくない.また疼痛は変形の程度と比較すると軽微であるか,全く疼痛がないことも多い.一方で機能的な問題はなくても,手は露出部位であるため,美容上の問題を気にしている患者も多い.これらの主訴を総合的に判断して治療方針を決定する必要がある.

 また関節リウマチの内科的治療状況は,治療方針を考えるうえで重要である.手指変形の治療は,薬物療法により疾患活動性が十分にコントロールされている状態であることが望ましい.


必要な検査とその所見

 関節破壊の程度を評価するために,単純X線撮影は必須である(図16-21a).高度な変形であっても,関節形状は維持されている場合もある.関節破壊の状態を詳細に評価するためには,CTも有用である.多関節に腫脹を認める場合には,疾患活動性の評価に血液検査を行う.

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