診療支援
治療

爪周囲炎
Paronychia
佐野 和史
(順天堂大学 先任准教授(形成外科学))

【疾患概念】

 手領域で最も頻繁に遭遇する感染性炎症性疾患である.深爪や爪甲周辺のささくれから原因菌が侵入し発症する.時に爪甲遠位側縁の切り残しの陥入やマニキュアや除光液による刺激がきっかけとなる.

【病態】

 側爪郭,近位爪郭,また爪甲下に膿瘍形成を認める.時に深部に至り,ひょう疽や指腹部膿瘍へ波及しうる.


問診で聞くべきこと

 糖尿病やステロイド治療歴など重症化をきたしうる易感染疾患の病歴を確認する.単純ヘルペス感染の家族歴,口腔ケアを行う看護師や歯科衛生士などの職業歴の聴取は後述のヘルペス性ひょう疽との鑑別に重要である.爪周囲炎が慢性的に多発する場合は,非小細胞肺癌に対する抗悪性腫瘍薬(ジオトリフ®)の副作用の可能性があるため,投与歴を確認する.


必要な検査

 排膿した場合は培養検査により起炎菌を同定する.通常起炎菌は黄色ブドウ球菌だが,最近はMRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)の場合もある.さらに慢性の経過をたどる場合は抗酸菌や真菌感染の可能性もある.


診断のポイント

 爪甲周囲の膿瘍形成を視認し診断するが,単純ヘルペスウイルス感染を原因とするヘルペス性ひょう疽では有痛性の多発小水疱を指尖部に認め,その外観は表在性膿瘍を伴う急性爪周囲炎と酷似する場合があるため注意する.同様の症状を繰り返し,発症初期より上肢のリンパ管炎や腋窩リンパ節の有痛性腫脹を認めるにもかかわらず,局所炎症所見に乏しい印象がある場合は,先述した家族歴や職業歴とともに鑑別疾患として必ず疑う.


治療方針

【1】保存療法

 発症初期で明らかな膿瘍形成を認めない場合は,局所安静と第1世代セフェム系抗菌薬投与を行う.

【2】手術療法

 側爪郭,近位爪郭また爪甲下に膿瘍形成を認める場合は,切開や部分抜爪により排膿し培養検査により起因菌同定を行う.


合併症と予後

 経過中に指腹部

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