【疾患概念】
多発性の血管性腫瘍(angioma)を伴う内軟骨腫症(enchondromatosis)でまれな遺伝疾患であり,遺伝形式も不明である.性差や人種差もないとされるが,IDH1/IDH2にmutationがみられることが多い.
【病態】
中胚葉性組織の形成異常と考えられ,知的・精神的な発達は正常である.4~5歳で四肢末梢の青色の病変で気づかれることが多い.皮膚・骨病変は10歳代までゆっくり進行し,10~20歳代でその進行は止まることが多く,低身長を示すこともある.血管病変は静脈性血管奇形(venous malformation)で表在性・深在性ともにあり,また左右非対称性に認められる.暗青色を呈し,圧迫で容易に小さくなり,無症状なことが多いが,血栓形成や静脈石の形成もみられる.内軟骨腫症は全身の骨に生じ,片側性に腫瘍が多発することが多いが,両側性あるいは交差性のこともある.内軟骨腫の90%は手に生じ,他に足,大腿,下腿,肋骨,頭蓋骨などにも生じる(図16-27図).成長期に緩徐に増大して,進行性に骨の膨隆を生じる.内軟骨腫による関節可動域制限,成長障害での脚長不等やアライメント異常,病的骨折・変形が臨床上問題となる.内軟骨腫の約30%は平均40歳の頃に悪性化し,軟骨肉腫(chondrosarcoma)になる.内軟骨腫の悪性化がなければ,その予後は良いとされる.軟骨肉腫のほかに血管肉腫(angiosarcoma)や神経膠腫(glioma)の発生も報告されている.
必要な検査と所見
骨軟部病変は定期的な観察が必要である.骨の悪性化の診断には定期的なX線検査,CT,骨scan(Tec),軟部病変に対しては年1回のMRI検査が推奨される.
診断のポイント
四肢の血管腫に内軟骨腫(骨皮質の膨化,骨透亮像,関節破壊,骨変形)が合併すれば診断は比較的容易である.
治療方針
無症状であれ