診療支援
治療

痙性麻痺手
Spastic hand
河村 太介
(北海道大学大学院 助教)

【疾患概念】

 脳性麻痺や脳血管疾患,頭部外傷,頚髄損傷などを原因として生じる.痙縮と麻痺の組み合わせにより関節変形や拘縮を引き起こす.

【病態】

 脳性麻痺は出生時仮死,早産,低出生体重児などの低酸素性虚血脳病変により生じ,多彩な症状を呈する.

 脳血管疾患は頭蓋内の血行不全や出血などによる疾患の総称で,脳梗塞,脳出血,くも膜下出血などが痙性麻痺手の原因となる.

 脳血管疾患による運動麻痺は急性期には弛緩性であるが,その後筋緊張が回復し深部腱反射が亢進する.上肢では屈筋群の痙縮が現れ,その後麻痺肢の随意的運動が可能となる.この回復過程の評価にBrunnstrom stage(表16-1)が用いられる.


診断のポイント

 随意的な筋収縮と痙縮,筋の拘縮,関節拘縮を注意深く区別する.

 脳血管疾患の場合はBrunnstrom stageによる回復過程の評価を行う.


治療方針

【1】脳性麻痺

 脳の発育を促進するためにも,できる限り上肢機能を向上させるよう治療を計画する.拘縮予防のための理学療法,作業療法,装具療法を行うが,症状が重くなるにつれ効果は一時的となる.そうした症例では手術治療を選択する.手術は機能改善の他に,整容や保清を改善する目的でも行われる.機能改善を目指す手術であっても完全な機能を獲得することは困難である.

 手術は術前の機能評価が行える6~12歳に行う.

【2】脳血管障害

 脳性麻痺と違い中高年の患者が多く,一度獲得した機能を突然失うため,より大きな機能障害を自覚することになる.

 手術はBrunnstrom stageのStage Ⅳ以上の機能があり,高次脳機能障害や重度の感覚障害を伴わない場合に適応となる.


保存療法

【1】フェノールブロック

 5%フェノール液により,筋肉に向かう運動神経周囲の蛋白質を変性させることで,ブロック効果を得る.経皮的に注入されることが多いが,目的とする筋肉の

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