診療支援
治療

結核性脊椎炎
Tuberculous spondylitis
本郷 道生
(秋田大学 講師)

【疾患概念】

 結核性脊椎炎は,脊椎カリエスともよばれ,結核菌が血行性感染により軟骨終板下に病巣を形成し,椎体,椎間板に進展して破壊し,膿瘍,腐骨などを形成する.さらに亀背などの脊柱変形が生じ,時に脊髄麻痺となる疾患である.

【疫学】

 2018年の統計では,わが国での結核罹患率は人口10万人当たり12.3人,結核新規登録患者は年間15,590人であり,年々減少傾向にある.このうち,結核性脊椎炎は155人(1.0%)であった.70歳以上の高齢者は105名(68%)を占める.

【病態】

 起因菌は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)であり,最初の感染経路は肺が最も多く,次いで泌尿生殖系であり,その後血行性に脊椎に達するとされる.病変は椎体前方の椎体軟骨終板から始まり,徐々に椎体中央に広がる.次いで椎体終板が肉芽や膿瘍により破壊され,椎間板に侵入して隣接椎体に病巣が波及するという経路をたどる.その経過は化膿性脊椎炎と比べて緩徐である.破壊された椎体では壊死が生じて腐骨が形成され,亀背などの脊柱変形が生じる.膿瘍や破壊された椎体後壁による圧迫,脊柱変形の進行に伴いPott麻痺とよばれる脊髄麻痺を生じる.


問診で聞くべきこと

 全身症状の有無,腰背部痛などの症状が生じてからの経過と,疼痛の具体的な性状や神経症状,膀胱直腸障害の有無を確認する.また結核の既往や家族歴の聴取も重要である.

【臨床症状】

 全身症状は,肺結核と同様に,微熱,倦怠感,寝汗,易疲労感,食思不振,体重減少などを認めることがあるが,症状のないことも多い.罹患部位の疼痛も生じるが,化膿性脊椎炎と比べ軽度である.脊柱可動性が低下して不撓性が生じることもある.傍脊柱に生じる膿瘍は炎症所見に乏しく,冷膿瘍(cold abscess)とよばれる.膿瘍は,腸腰筋に沿って流注膿瘍となり,時に腸骨窩膿瘍を形成する.骨破壊

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