【疾患概念と頻度】
脊椎に原発する腫瘍を「原発性脊椎腫瘍」と総称し,他臓器原発の「転移性脊椎腫瘍」と区別する.日本整形外科学会の「全国骨腫瘍登録一覧表」によれば,2006~2015年の原発性骨腫瘍17,640例中,脊椎発生は1,335例(7.6%)と頻度は高くない.良性が636例,悪性が683例で,良性は血管腫324例,巨細胞腫(giant cell tumor;GCT)116例,類骨骨腫41例,骨軟骨腫33例,悪性は脊索腫284例,リンパ腫91例,骨肉腫69例,骨髄腫68例,Ewing肉腫48例,軟骨肉腫36例であった.東北大学脊椎外科懇話会の手術登録では1988~2017年の全脊椎手術76,925件中,原発性脊椎腫瘍は305件,0.4%を占めるに過ぎない.
【病態】
一部の腫瘍を除いては特徴的な臨床症状に乏しい.腫瘍が大きくなると骨破壊などによる疼痛や変形,神経を圧迫すれば脊髄・馬尾症状や神経根症状などを呈してくる.類骨骨腫,動脈瘤様骨嚢腫(aneurysmal bone cyst;ABC),骨軟骨腫などの良性腫瘍は,椎弓や椎弓根など脊椎の後方要素に好発する.
問診で聞くべきこと
変性疾患と異なる安静時痛の有無,しびれや排尿障害など自覚する神経症状について問診する.類骨骨腫では夜間痛,アスピリン薬やNSAIDsの効果について尋ねる.
必要な検査とその所見
脊柱の変形,叩打痛,神経学的所見は必須である.身体所見から推測される脊柱高位を中心に画像検査を行う.
(1)単純X線
骨病変がある程度大きくならないと単純X線では認識できない.脊柱の変形と骨破壊,骨硬化について観察する.骨硬化性腫瘍として類骨骨腫,骨芽細胞腫,骨形成性骨肉腫などが挙げられる.片側の椎弓根が溶骨すればpedicle sign,“winking owl”signを呈する.
(2)CT
骨の破壊,膨隆,硬化などを鋭敏に
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