【疾患概念】
脊髄や神経根の近傍で動脈と静脈が直接吻合することによって,動脈血が直接脊髄表面の静脈に還流してしまい,脊髄からの正常な静脈血が静脈へ流れ込むことができなくなる血管奇形の1種である.次のような機序による脊髄障害症状を起こす.
①細動脈の血流が不足するために脊髄の虚血が生じる.
②静脈のうっ滞により脊髄内の静脈還流障害が生じる.
③動脈瘤や静脈瘤が生じ,脊髄を圧迫する.
④動静脈奇形が破裂し,髄内出血,くも膜下出血が生じる.
【頻度】
脊髄動静脈奇形はまれな疾患で,手術治療が行われるのは,人口400,000人に1人程度であるとされている.
【分類】
動静脈の吻合部(シャント)の局在により,次の4つに分けられる.
①脊髄髄内動静脈奇形(intramedullary arteriovenous malformation;intramedullary AVM)
②脊髄硬膜内傍脊髄動静脈瘻(perimedullary arteriovenous fistula;perimedullary AVF)
③脊髄硬膜動静脈瘻(dural arteriovenous fistula;dural AVF)
④脊髄硬膜外動静脈瘻(epidural arteriovenous fistula;epidural AVF)
【臨床症状・病態】
脊髄循環障害により,手足のしびれ,運動麻痺,排尿障害などの症状が緩徐に出現し,ゆっくりと進行することが多い.動静脈奇形が脊髄実質内で破裂する脊髄内出血では,突発的に重度の脊髄麻痺を引き起こすことがある.まれに,上位頚髄の動静脈奇形がくも膜下腔内で破裂することがあり,くも膜下出血による突発的な重度の頭痛,項部硬直,および意識障害を引き起こすことがある.
髄内動静脈奇形は頚髄に好発し,多くは脊髄実質内の腹側にある.若年者に起こり,出血による突然の背部痛や四肢麻痺で発症する場合と