診療支援
治療

脊髄空洞症
Syringomyelia
水谷 潤
(東京女子医科大学八千代医療センター 准教授)

【疾患概念】

 脊髄の中が空洞のように広がり,その中に脳脊髄液が貯留して脊髄機能の障害が生じる状態.病態の詳細はまだ完全に解明されているわけではないが,脊髄周辺において脳脊髄液の循環動態不良が生じることによって空洞が形成されると考えられている.

 脊髄内に空洞形成を示す疾患の病理所見は,Estienneによって1546年に報告され,Ollivier-d'Angerはこの疾患をsyringomyelia(脊髄空洞症)と命名した.Simonは中心管とは無関係に形成された空洞をsyringomyeliaとよび,中心管が拡大して形成された空洞をhydromyelia(水髄症)と提唱した.しかし,臨床的に両者を区別することは困難で,syringomyelia(脊髄空洞症)という名称が一般に用いられている.

【頻度】

 発生頻度は,男女ほぼ同数で,家族性の発症はまれである.下記に述べる病型で考えると,Chiari奇形に伴う発生頻度が最多である.

【病型】

 空洞をきたす原因疾患からは以下のものに大別される.

①Chiari奇形に伴うもの

 Chiari奇形とは小脳,延髄および橋の発生異常を基盤とする奇形で,小脳や下部脳幹が大孔下縁を越えて下降し,脊柱管内へ陥入した状態.4型に分類されるが,日常診療上問題となるのはⅠ型とⅡ型である.

②癒着性くも膜炎に伴うもの

 癒着性くも膜炎とは,脊髄の周りの水の通るスペースに,何らかの原因で炎症が起こり,そのためにやはり,髄液の流れが妨げられることにより,その部位から下に,空洞が出現するタイプの脊髄空洞症である.

③脊髄腫瘍に伴うもの

④脊髄出血後に伴うもの

【臨床症状】

(1)知覚系症状

 初発症状としては知覚障害の訴えが多く,主に上肢~上半身,特に手の痛みや温度に対する感覚鈍麻(ジャケット型または宙吊り型感覚障害と称される)が初発であることが多い.古典的には両側宙吊り型知覚障

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