診療支援
治療

脊髄小脳変性症
Spinocerebellar degeneration(SCD)
矢部 一郎
(北海道大学大学院 教授(神経病態学分野神経内科学教室))

【疾患概念】

 脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration;SCD)とは,慢性進行性の小脳性運動失調を中核症状とする一群の神経変性疾患の総称である.病理学的には小脳を中心とした系統変性をきたすものが多いが,病変の程度や分布は疾患により異なる.遺伝性SCDと孤発性SCDに大別され,分子遺伝学的な研究が進み,起因遺伝子の解明された遺伝性SCDが増えている.孤発性/非遺伝性の約2/3は多系統萎縮症(multiple system atrophy;MSA)であり,残り1/3が臨床的に皮質性小脳萎縮症(cortical cerebellar atrophy;CCA)と診断されている.CCAには小脳症候を主徴とするMSAの初期,家族歴の明確でない遺伝性SCD,二次性運動失調症なども含まれている可能性もあり,均一な疾患ではない.いずれの病型においても,現時点で根治療法は見出されておらず,難治性神経疾患の範疇に属する.

【病態】

 本邦で比較的頻度の高い優性遺伝性SCDとして,脊髄小脳失調症1型(spinocerebellar ataxia type 1;SCA1),SCA2,Machado-Joseph病(MJD),歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy;DRPLA),SCA6,SCA31が挙げられる.このうちSCA31以外は,遺伝子翻訳領域内に位置するCAGリピートが異常伸長し,そこから異常伸長したグルタミンリピートを有する蛋白質が翻訳される.それにちなんでCAGリピート病もしくはポリグルタミン病と総称される.異常伸長したポリグルタミンはユビキチン化されて核内に凝集し封入体を形成する.CAGリピート病では起因遺伝子のリピート数が多いほど発病年齢が若年化し,進行が速く,症状も重篤かつ多彩となる傾向があ

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