【疾患の概念】
Marfan症候群とは,全身の結合組織に異常を生じる常染色体優性遺伝性疾患であり,フィブリリン遺伝子(15q21)の変異が原因とされる.本症候群は主として骨格系,眼球,心血管系の異常を呈し,1896年にフランスの小児科医であるアントワーヌ・マルファン博士により初めての報告がなされている.
本症候群は一般的には精神発達遅延はなく,小児期には関節弛緩による過度運動性(hypermobility)が認められることが多い.整形外科的に最も問題となる変形は脊柱側弯症であり,側弯のカーブは比較的硬い.
【発生頻度】
Marfan症候群の発生頻度は人口110万人に対して4~6人とされているが,実際にはMarfanoidと呼ばれる不全型が多く存在しており,正確な発生頻度は不明である.遺伝形式は常染色体優性であるが,そのうち約25%は家族歴のない散発性とされる.本症候群に側弯症の合併する頻度は約60%である.
【臨床症状】
Marfan症候群における心血管系合併症は,僧帽弁と大動脈において認められる.大動脈瘤破裂や大動脈解離により突然死をきたすことがある.また三主徴の1つとされる水晶体偏位(亜脱臼)は,本症候群の患者の70%以上に認められるとされ,それによる視力の低下,自然気胸により呼吸困難などを呈する.また,漏斗胸や鳩胸などの胸郭の変形をきたすことが少なくない.
合併する側弯症の特徴は,ダブルカーブやトリプルカーブなど複雑なカーブが多く,若年発症でかつ急速進行し,思春期後期でも進行することである.また.関節の弛緩傾向があるにもかかわらず,柔軟性のない硬いカーブが多く,椎体の側方へのすべりや椎体形成不全が多いとされる.
問診で聞くべきこと
常染色体優性遺伝であるために家族歴の有無は重要である.高度の近視や水晶体脱臼の有無を知るうえで,眼科への受診歴も重要である.これまでに検診などで
関連リンク
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