診療支援
治療

神経・筋原性疾患に伴う脊柱変形
Spinal deformity in patients with neuromuscular disease
寺井 秀富
(大阪市立大学大学院 准教授)

【疾患概念】

 脊柱変形には側弯症と後弯症があり,そのうち側弯症はCobb角が10°以上であるものと定義され,さらに特発性側弯症,先天性側弯症,症候性側弯症に分けられる.特発性側弯症は現在のところ原因が不明の側弯であり,思春期の女児に多く見られ80%以上は特発性に属する.先天性側弯症は先天的な形態異常(半椎や癒合椎,肋骨の癒合不全など)に起因する側弯であり,全側弯症の10~15%程度である.症候性側弯症は神経線維腫症やMarfan症候群に伴うものが有名であるが,脳性麻痺,ムコ多糖症などの代謝性疾患,進行性筋萎縮症,脊髄性筋萎縮症,二分脊椎などでも側弯を生じる.全体の5%程度が症候性といわれている.成人例ではParkinson病に伴う脊柱変形が有名であるが,本稿では小児例を想定して記述する.

【臨床症状】

 神経・筋原性疾患に伴う側弯症の患者は整形外科を紹介受診時にはすでに原疾患の病状が進行しており,生活の中心は座位または臥位であり,車椅子や座位保持装置付きの車椅子を使用していることがほとんどである.側弯の程度は特発性側弯症と比較して大きく,原疾患と相まって著しい呼吸機能の低下をきたす.患者のほとんどはflaccidの状態であり,側弯が進行すると座位保持ができなくなって常に車椅子にもたれかかる必要が生じ,上肢の自由が制限されるようになる.また,姿勢を保つことができないと気道の確保が困難になり,呼吸機能低下と相まって誤嚥や風邪ひきを繰り返すようになったり,食思不振になったりする.ほとんど臥位しかとっていない患者でも,成長期には側弯が進行することに注意したい.


問診で聞くべきこと

 ほとんどの場合小児科でのフォローを受けており,詳しい病状や現在行っている治療方法,通院の頻度,今後の見通しなどについては,小児科主治医からあらかじめ詳細を聞いておく.整形外科医としては日常の生活,食事摂取方法や

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