診療支援
治療

頚椎椎間板ヘルニア
Cervical disc herniation
新井 嘉容
(埼玉県済生会川口総合病院 副院長〔埼玉県川口市〕)

【疾患概念】

 頚椎椎間板はその変性の過程において髄核の水分が減少し,軟骨板を含めた椎間板組織にフラグメンテーションが生じるようになる.そのフラグメント化した軟骨板を含む椎間板組織片が,脆弱化した線維輪や後縦靱帯深層を穿破したものがヘルニアである.ヘルニアはしばしば神経根や脊髄を圧迫して,それぞれ神経根障害,脊髄障害を引き起こす.

【頻度】

 頚椎の椎間板変性は20歳代に始まるとされている.したがって頚椎のヘルニアは30~50歳代で生じることが多い.神経根症をきたすヘルニアの椎間板高位はC6/7椎間が最も多く,次いでC5/6,C7/T1,C4/5椎間の順である.一方,脊髄症ではC5/6椎間が最も多く,次いで,C4/5,C3/4,C6/7の順である.

【病型・分類】

 その局在から正中,傍正中,外側(椎間孔)ヘルニアの3タイプに分類される(図19-13).脊髄症は正中あるいは傍正中のヘルニアで,神経根症は外側あるいは傍正中のヘルニアで引き起こされる.また,後縦靱帯穿破の様式から次の3型に分けられるが,術前MRIでの判別は難しい.

Ⅰ型:靱帯内脱出.後縦靱帯の深層を穿破し,浅・深2層間に留まるもの.

Ⅱ型:後縦靱帯浅層穿破.靱帯を破り,一部が硬膜外腔に脱出したもの.

Ⅲ型:硬膜外遊離片.硬膜外腔に脱出し,遊離断片となったもの.

 手術例では脊髄症,神経根症のいずれもⅠ型が最も多かったとの報告がある.

【臨床症状または病態】

(1)神経根症

 片側上肢の疼痛・しびれや頚部・肩甲間部の疼痛が主訴である.比較的急速に発症する激しい疼痛であることが多い.患側の手を挙上して後頭部にあてがっている例があるが,神経根の緊張がゆるみ,圧迫が軽減するためと考えられる.なお,胸部へ痛みが放散することがあり狭心症と間違われることもある.

(2)脊髄症

 四肢しびれ,両手指巧緻運動障害,歩行障害,膀胱直腸障害が主訴である.左右

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