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治療

中下位頚椎・頚髄損傷
Injury of the middle and lower cervical spine and spinal cord
半田 隼一
(福島県立医科大学 助教)

【疾患概念】

 後頭骨から第1頚椎(環椎),第2頚椎(軸椎)に生じる損傷を上位頚椎損傷という.中下位頚椎損傷は第3頚椎から第7頚椎までに生じる損傷をいう.損傷を受けた部位の不安定性,骨傷,および脊髄損傷の有無によって,治療方針が変わる.

【頻度】

 2002年に実施された全国調査では,新規脊髄損傷発生頻度は約30人/100万人/年と推定された.頚髄損傷の占める割合は83.1%であることから,新規発生頻度は約25人/100万人/年と推定される(上位頚髄損傷も含む).非骨傷性頚髄損傷の占める割合は頚髄損傷の約70%と報告されており,特に高齢者の転倒における非骨傷性頚髄損傷が増加している.

【病型・分類】

 中下位頚椎損傷の分類で,わが国において広く用いられているのは,Allen分類である.この分類は,画像所見より予測される受傷機転と,重症度をもとに6型に分類され,治療方針を決定するうえで有用な分類法である.また,2007年にSpine Trauma Study Groupらによりsub axial injury classification(SLIC)が提唱された.SLICは損傷形態,椎間板-靱帯複合体,神経組織損傷の3つを点数化し,手術適応の有無を判定するのに有用な分類である.さらに,2016年にAOSpineグループは,AO分類(AOSpine sub-axial cervical spine injury classification system)を提唱した.これは胸腰椎損傷のAO分類による損傷形態に基づいた分類である.

【臨床症状または病態】

 受傷原因として,中下位頚椎損傷は上位頚椎損傷と同様に,交通事故や転落,スポーツ外傷がほとんどを占める.解剖学的な相違から,上位頚椎損傷とは受傷機転や症状発現に相違がある.中下位頚椎損傷は,頚部への介達外力により生理的範囲を超えた運動を強制さ

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