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胸椎の解剖
Anatomy of thoracic spine
加藤 仁志
(金沢大学大学院 助教)

1.椎骨

 椎体の形状は,上位胸椎から中位胸椎にかけて前後径を増し,胸椎全体として後弯している(図20-1).また,中位胸椎から下位胸椎にかけて横径を徐々に増して楕円形状に近くなり,体積も増して腰椎の形態に似る.棘突起の形状は基本的に三角柱状で,T1,T2では下位頚椎の形状に似て,ほぼ後方水平に突出しているが,T7,T8に近づくにつれて下方へ傾斜が強くなり,その後再び水平化していき,T11,T12ではほぼ水平になり腰椎の形状に似る.椎弓の形状は扁平で,頚椎や腰椎より水平面が広く,上位胸椎は長方形状をなし,下位胸椎にかけて正方形状に近づく.上下椎弓の重なり部分は椎間関節をなし,それぞれ屋根瓦状に重なっている.横突起の側方突出はT1からT12にかけて次第に減少し,大きさは上位から中位にかけて次第に長大となり,T7,T8で最大となるが,それより下位では短小となる.T11,T12では退縮して後方に向かい,先端は腰椎の横突起に似て上方の乳頭突起と下方の副突起に分かれる.椎弓根は椎体上半分に位置しており,T1,T2やT10~T12は比較的円形で太いが,T3~T9では縦長で細くなる.椎間関節の横断面における傾きは上中位胸椎では前額面に近く,下位胸椎では腰椎に似て矢状化する.したがって,胸椎は腰椎に比べて前後屈の可動域が小さく,軸回旋可動域が大きい.脊柱管は他の部位に比べると円形で狭小であり,脊髄は前脊髄動脈の発達も乏しく血流供給は不十分である.したがって,胸椎は力学的に安定しているが,神経生理学的には弱点を有している.


2.胸郭との関係

 第1~第10肋骨は,前方で肋軟骨を介して胸骨と連結し胸郭を形成する.肋椎関節によって胸郭は胸椎と連結され,胸椎を力学的に支持する(図20-1).一方,第11・第12肋骨は前方で自由端となるため,その力学的役割は小さい.すなわち,胸郭による支持を受けるのは

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