【疾患概念】
胸椎椎体後縁に存在する後縦靱帯に骨化を生じる疾患であり,厚生労働省の特定疾患治療研究事業の対象疾患の1つに指定されている.本疾患の成因はいまだ不明であるが,後縦靱帯骨化症(OPLL)の発生や増大には遺伝的背景に加えて,食生活,糖代謝,力学的要素も関係するという仮説に基づき多くの研究が行われている.欧米人に少なく日本人に多いなど人種差があり,OPLLは頚椎,胸椎,腰椎のいずれの部位にも生じうる.胸椎部においては生理的後弯を有し,脊髄血流のwatershedであるため,後弯位を呈する頚椎部,腰椎部と比べ症状進行が重篤で,治療に難渋する症例も多い.頚椎部が男性に多い(2:1)のに対し,胸椎部では女性にも多く,ほぼ同数かやや女性に多い.また手術に至る胸椎部重症例は女性に多い.胸椎OPLLは,整形外科医が遭遇する難治性疾患のなかで最も治療困難な疾患の1つである.
【臨床症状】
胸椎後縦靱