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治療

胸椎後縦靱帯骨化症
Ossification of posterior longitudinal ligament (OPLL) of the thoracic spine
吉田 剛
(浜松医科大学 助教)

【疾患概念】

 胸椎椎体後縁に存在する後縦靱帯に骨化を生じる疾患であり,厚生労働省の特定疾患治療研究事業の対象疾患の1つに指定されている.本疾患の成因はいまだ不明であるが,後縦靱帯骨化症(OPLL)の発生や増大には遺伝的背景に加えて,食生活,糖代謝,力学的要素も関係するという仮説に基づき多くの研究が行われている.欧米人に少なく日本人に多いなど人種差があり,OPLLは頚椎,胸椎,腰椎のいずれの部位にも生じうる.胸椎部においては生理的後弯を有し,脊髄血流のwatershedであるため,後弯位を呈する頚椎部,腰椎部と比べ症状進行が重篤で,治療に難渋する症例も多い.頚椎部が男性に多い(2:1)のに対し,胸椎部では女性にも多く,ほぼ同数かやや女性に多い.また手術に至る胸椎部重症例は女性に多い.胸椎OPLLは,整形外科医が遭遇する難治性疾患のなかで最も治療困難な疾患の1つである.

【臨床症状】

 胸椎後縦靱帯骨化症の初発症状としては,下肢の冷感やしびれ感が初発であることが多く,体幹の締め付け感や冷感が初発症状のこともある.しびれは足部に始まって次第に近位に上行することが多い.膀胱直腸障害は頚椎OPLLに比べ顕著である.また歩行障害も1/3に存在する.


問診で聞くべきこと

 家族歴,糖尿病をはじめとした内科疾患の有無,喫煙飲酒歴,生下時からの身長体重の経緯を聴取する.胸椎OPLLではbody mass index(BMI)が高く,糖代謝異常を基礎疾患として有している例がある.神経学的所見としては上肢,下肢のしびれ感の有無,排尿排便障害,歩行障害の有無を確認する.


必要な検査とその所見

(1)神経学的所見

 胸椎OPLLでは下肢の感覚障害と深部反射亢進,Babinski反射陽性,痙性麻痺の所見が見られるが,OPLLが胸腰椎移行部に存在する例では,円錐上部での障害を反映して下肢腱反射の低下・消失がみられるこ

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