診療支援
治療

胸椎椎間板ヘルニア
Thoracic disc herniation
赤羽 武
(山形大学)

【疾患概念】

 胸椎高位において変性などを背景に脱出した髄核が脊柱管内に突出し,脊髄・神経根を圧迫することで高位に応じた下肢・体幹部以遠の神経症状を生じる疾患である.

【頻度】

 胸椎椎間板ヘルニアは頚椎や腰椎と比較してまれであり,発生頻度は100万人に1人,全脊椎椎間板ヘルニアのうち0.25~0.75%とされる.性差はなく(男性48%,女性52%),40歳以降の中高年に多く,第8~12胸椎の下位胸椎発生が75%を占め,そのなかでも第11胸椎と第12胸椎の椎間に発生する頻度が最も高い.

【病型・分類】

 脱出部位に応じて正中・傍正中・外側に分けられ,正中と傍正中でおよそ70%を占める.

【臨床症状・病態】

 ヘルニアが生じた椎間板高位に応じ,同高位・同側以遠の脊髄症状・神経根症状を生じる.そのため,非特異的な背部痛や帯状の神経根性疼痛,体幹下肢の異常知覚,下肢の脱力やふらつきといった症状を主訴に受診することが多い.

 下位胸椎に好発すること,びまん性特発性骨増殖症や後縦靱帯骨化症の骨化非連続部位に多く発生すること,黄色靱帯の骨化出現高位に好発することから,脊椎の局所不安定性がヘルニア発生の原因の1つであると推測されている.


問診で聞くべきこと

 先に述べたように,下肢の異常知覚や筋力低下,歩行障害で受診することが多く,腰椎由来の疾患と区別が困難な場合がある.胸椎椎間板ヘルニアの可能性を念頭に置き,体幹の症状について問診することが重要である.また第10胸椎以下のヘルニアでは脊髄円錐部,円錐上部に由来する神経症状が出現し,身体診察においてさらに多彩な症状を示すため,注意も必要である.頚椎,腰椎疾患と同様に膀胱直腸障害の有無を確認する.


必要な検査とその所見

(1)神経学的所見

 病巣以遠の筋力や感覚,反射所見(深部反射の亢進,病的反射の出現),歩行能力などの神経所見を評価し,病巣より頭側の所見と比較する

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