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治療

終糸症候群,脊髄係留症候群
Filum terminale syndrome, Tethered cord syndrome
折田 純久
(千葉大学フロンティア医工学センター 教授)

【疾患概念】

 脊髄が脊柱管末端につなぎ止められる(係留)ことで神経症状を発症している状態を,脊髄係留症候群という.脊髄係留の要因には,肥厚した脊髄終糸(径2mm以上)による牽引の結果として脊髄円錐低位を呈しているものと,脊髄脂肪腫や脊髄披裂などの先天異常に伴うものがあるが,前者は脊髄係留症候群ではなく,(脊髄)終糸症候群とよぶのが一般的である.

【病態】

 脊髄最下端は胎生期に成長とともに上昇し,生後2か月で成人と同様の高位であるL1,L2移行部付近に位置するようになる.脊髄円錐がL2以下に係留されたものは低位脊髄円錐とよばれるが,肥厚した終糸により脊髄が係留されることで低位脊髄円錐を呈するものを,終糸症候群とよぶ.また,脊髄円錐が定位に位置していても,脊髄終糸に過度の緊張や肥厚などの異常所見を認めるものも終糸症候群に含まれる.この場合,成長に伴い脊髄がさらに牽引されたり,脊椎の過屈曲により脊髄に牽引力が加わることで,脊髄末端部に阻血性の血流障害が生じ,その結果,神経症状が出現すると考えられている.

 脊髄係留症候群では,胎生期に脊髄が形成される際に脊柱管内低位に脊髄が係留され,終糸症候群と同様のメカニズムにより神経症状を呈する.脊髄閉鎖障害に含まれ,通常は二分脊椎を伴う.脊髄係留の発症因子としては腰仙部脂肪腫が最も多く,類皮嚢胞や脊髄正中離開などの潜在性二分脊椎にみられる各病態に伴う.また,脊髄髄膜瘤や腰仙部脂肪腫の術後の再係留も病態として含まれる.


1.終糸症候群

【臨床症状】

 多くは小児期に発症するが,成人期になってからの発症例もみられる.

(1)自覚症状・他覚所見

 体幹の前屈制限,腰痛,下肢痛,tight hamstrings,下肢の運動知覚障害,下肢筋萎縮,SLR(straight leg raising)テスト異常,アキレス腱反射の異常(多くは亢進するが,まれに低下すること

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