診療支援
治療

成人の腰椎分離症・腰椎分離すべり症
Lumbar spondylolysis and spondylolisthesis in adults
青木 保親
(東千葉メディカルセンター 部長〔千葉県東金市〕)

【疾患概念】

 主に青少年期に起こる疲労骨折により,腰椎椎弓の上下関節突起間の連続性が断たれた状態を腰椎分離症という.疲労骨折が成人に発生することはまれであるため,成人の腰椎分離症は疲労骨折が骨癒合せずに偽関節化した状態と考えてよい.

 腰椎分離により腰椎後方組織の安定性が損なわれ,分離椎体と尾側椎体との間に機械的ストレスが生じる.その結果として椎間板変性や分離すべりが起きる(図21-9a).すべりに伴い腰痛や下肢症状が生じた状態を腰椎分離すべり症という.

【頻度】

 日本人の腰椎分離保有率は約6%であり,男性にやや多い.腰椎分離は下位腰椎に多く,L5椎弓が好発部位である.

 腰椎分離を有する患者の過半数において,一生涯の間にすべりが生じると考えられている.すべりが生じる時期は50歳代以降であることが多いが,20歳代以下の若年期にすべりが発生する場合もある.片側分離の場合にすべりを発生する確率は低い.

【臨床症状および病態】

 成人における腰椎分離・分離すべりは無症状である場合も少なくない.

 最も頻度の高い症状は腰痛であり,分離部のみならず椎間板,椎体終板などのさまざまな組織が腰痛の原因となりうる.

 下肢症状は神経組織が圧迫されることで生じることが多い.分離椎体が前方へ移動しても分離椎弓は後方へ残るため,脊柱管が中心性狭窄を起こすことはまれである.必然的に馬尾障害をきたすことはほとんどなく,片側の神経根障害をきたすことが多い.神経根圧迫部位は分離部から椎間孔にかけてである(図21-9b).


問診で聞くべきこと

 腰椎分離症・分離すべり症の症状である腰痛,下肢痛,間欠性跛行の有無を確認する.

 腰椎分離症は青少年期に発症することが多いので,青少年期の腰痛の既往も参考になる.

 手術適応の参考にするため,発症時期や経過,治療歴,日常生活制限の程度や下肢脱力感の有無なども聴取する.


必要な検査とその

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