【疾患概念】
大腰筋と腸骨筋とを合わせて腸腰筋とよぶ.前者は第12胸椎から第5腰椎の横突起基部,椎体側面,椎間板から,後者は腸骨窩の上方部分から起始し,ともに大腿骨小転子に停止する.この筋に感染が及んだものが化膿性腸腰筋炎である.
【病型・分類】
化膿性腸腰筋炎は,原発性と続発性に分けられる.原発性は血行性に菌が運ばれて発症し,続発性は隣接臓器の感染(脊椎炎,胃腸穿孔など)から菌が直接侵入して発症する.
【臨床症状】
感染で通常みられる発熱や疼痛などを訴える.患側の股関節が屈曲位をとっており,他動的に伸展や内旋させると疼痛が誘発されるのが特徴である(psoas sign).
必要な検査とその所見
(1)血液検査
白血球数の増加,核の左方移動,CRPやプロカルシトニンの高値がみられる.
(2)画像検査
腹部または腰椎のX線正面写真で,大腰筋陰影が腫大していることがある.しかし,軽度の場合にはこの判別が難しいことと,腸骨筋陰影の観察が難しいことから,CTやMRIで観察するほうが容易である.
(3)培養検査
腸腰筋膿瘍を穿刺して,培養検査に提出し,起炎菌が同定されれば確定診断となる.通常,CTガイド下で穿刺を行う.血液培養もしておく.
診断のポイント
Psoas signとCTまたはMRIで腸腰筋の腫大を認め,組織培養で起炎菌が同定されれば確定診断となる.
治療方針
【1】原発性
CTガイド下で膿瘍を穿刺して,培養検査に提出するとともに,ドレナージ・チューブを留置してドレナージを行う.また,起炎菌に感受性のある抗菌薬を投与する.血行感染の原因となり得る心内膜炎などの検査を進め,あればその治療も行う.
【2】続発性
基本的な治療は,原発性と同じである.しかし,原因となった脊椎炎・胃腸穿孔などが治癒しなければ,腸腰筋炎も治癒しないので,これらに対して手術を行うことがある.
合併症と予後
腸腰筋は血行が豊富
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