診療支援
治療

仙腸関節の疼痛
Sacroiliac joint pain
金岡 恒治
(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)

【疾患概念】

 仙腸関節は,関節周囲を強固な靱帯で結合されているため可動性に乏しいが,数度程度のわずかな可動性を有する.骨盤輪に何らかの動作による負荷が繰り返されることで,仙骨と腸骨間の後仙腸靱帯やその付着部に負荷が加わり,微細損傷を起こし,炎症を惹起し,その修復過程で神経組織が侵入することで疼痛を生じると考えられる.また後仙腸靱帯のみならず,仙骨と腸骨を連結する靱帯やその付着部に疼痛を伴うため,骨盤輪不安定症による靱帯付着部障害ととらえると病態を理解しやすい.

【頻度】

 わが国の報告では一般整形外科外来を受診した,いわゆる非特異的腰痛患者の疼痛原因の6%程度を占めるとされる.

【病型・分類】

 前屈動作によって疼痛を生じるニューテーションタイプ,伸展動作によって疼痛を生じるカウンターニューテーションタイプ,どちらでも痛む不安定型に分けられ,各々の病態によって後述するリハビリテーションの方法が異なる.

【臨床症状】

 腰痛を主訴とし,動作時痛,座位での疼痛,鼡径部痛など,とらえどころのない骨盤周囲の疼痛を訴える.疼痛部位は上後腸骨棘付近にあり,人差し指1本で痛みの場所を指すように指示すると,上後腸骨棘付近を指す(one finger test陽性).また骨盤輪を構成する長後仙腸靱帯,仙結節靱帯などの圧痛,付着部痛を伴うことがある.仙腸関節への負荷が増す片脚立位,階段昇降,歩幅の広い歩行などで疼痛が増強し,免荷するために杖を使用することもある.仰臥位で下肢を伸展して自動挙上させるactive SLRテストによって,腸骨に回旋力が加わり,仙腸関節に負荷が加わることで腰痛が再現され下肢挙上が制限されることがある.検者が下肢を支えて他動的に挙上させると疼痛が生じないため通常の下肢伸展挙上テストと区別される.また機序は明らかではないが,仙腸関節障害によって下肢のしびれや疼痛,まれに下肢の筋力低下

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