【疾患概念】
股関節内の細菌感染であり,大腿骨近位骨幹端部骨髄炎からの波及や,滑膜からの血行性波及などが原因となり生じる.治療開始遅延により大腿骨頭壊死や股関節脱臼,大腿骨成長障害などの重篤な機能障害を生じる可能性が高い.
【病態】
発熱およびおむつ替え時の激しい啼泣,自動運動の消失(仮性麻痺)を認める.股関節は熱感・腫脹・圧痛を認めており,屈曲外旋位拘縮を示すことが多い.起炎菌としては黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌,肺炎球菌,インフルエンザ菌が多い.
問診で聞くべきこと
基礎疾患,先行感染,抗菌薬投与の有無.
必要な検査とその所見
38.5℃以上の発熱および上記下肢症状を認める場合には,股関節単純X線撮影,超音波検査および血液検査を行う.超音波検査で関節液の貯留が確認できて,なおかつ白血球数12,000/mm3以上,CRP2.0mg/dL以上,赤沈1時間値40mm以上のいずれかを認めた場合には,化膿性股関節炎の可能性が高いと判断して関節穿刺を行い,膿の貯留を確認する.穿刺経路中に化膿性筋炎などの関節外病巣を有する可能性もあるため,可能であれば穿刺前に緊急MRI検査を施行する.
鑑別診断で想起すべき疾患
化膿性筋炎,若年性特発性関節炎,単純性股関節炎.
診断のポイント
発熱および股関節痛と思われる症状を認めた場合には,必ず化膿性股関節炎を念頭に置いて診断に当たる必要がある.
治療方針
関節穿刺で膿の貯留が確認できれば,緊急で手術(関節洗浄+ドレーン留置)を行う.手術方法としては直視下手術(前方または内側アプローチ)や鏡視下手術がある.術後は長期にわたり抗菌薬を投与する必要がある.
合併症と予後
大腿骨頭壊死や股関節脱臼,大腿骨成長障害などを生じる場合がある.
患者説明のポイント
股関節に重篤な障害が生じるため,診断確定後は速やかに手術を行う必要がある.早期に手術できた場合にも将来股関節の変