診療支援
治療

弾発股
Snapping hip
帖佐 悦男
(宮崎大学 教授)

【疾患概念】

 股関節の動作時に弾発現象が生じる疾患の総称である.原因により関節外型と関節内型に分類され,関節外型には外側型と内側型がある.

【病態】

 関節外型では,動作時に筋・腱・靱帯が骨性隆起を乗り越える際に弾発現象が生じる.関節内型では,動作時に関節唇など遊離体が「ひっかかる」ことにより生じる.


問診で聞くべきこと

 どのような動作,肢位にて弾発現象が生じたのか,また疼痛の有無を聴取する.


1.関節外型

【病態】

 外側型では腸脛靱帯が股関節の屈伸動作時に大転子を,内側型では腸腰筋腱が恥骨隆起を乗り越える際に生じることが多い.

【臨床症状】

 大転子部や鼡径部に弾発現象を認め,疼痛を伴う場合がある.


診断のポイント

 腸脛靱帯の場合,大転子を触知し下肢を内転させるようなストレスを下腿外側に加え,股関節を屈伸させ誘発する(bicycle test).腸腰筋腱の場合,鼡径部を触知し股関節を屈曲外転(開排)し,その後,伸展内旋させ誘発する.


2.関節内型

【病態】

 関節唇損傷,骨軟骨腫症,離断性骨軟骨炎などによる遊離体が「ひっかかる」ことにより生じる.

【臨床症状】

 股関節動作時の「ひっかかり」,クリック徴候を認め,疼痛を伴う場合がある.


診断のポイント

 MRIなどの画像検査で遊離体を確認し,キシロカインテストを実施する.


専門医へのコンサルテーション

 弾発現象に加え疼痛が増強する場合,専門医に紹介する.


治療方針

 保存療法が基本である.


保存療法

 局所の安静・消炎鎮痛処置や弾発現象を避けることを指示し,リハビリテーション(ストレッチング,温熱療法)を実施する.滑液包炎,腱周囲炎や関節炎が生じている場合,ステロイドの局所・関節内注射を行う.


手術療法

 滑液包切除,腱靱帯延長術・形成術や腸腰筋腱付着部解離術,関節唇修復術や遊離体摘出術などを行う.


患者説明のポイント

 明確な解剖学的異常がない場合,弾発現象を生じる動

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