診療支援
治療

股関節脱臼骨折
Hip fracture dislocation
吉田 健治
(筑後市立病院 顧問〔福岡県筑後市〕)

【疾患概念】

 交通事故や労災事故などの高エネルギー損傷により,外傷性股関節脱臼が生じる.大腿骨頭の血行は,内側大腿回旋動脈の分枝である外側骨端動脈(lateral epiphyseal artery)であり,阻血を生じやすい.本外傷は,大腿骨頭骨折あるいは寛骨臼縁骨折を伴うことがある.大腿骨頭壊死の発生率を低下させるために,早期の脱臼整復が必要である.

【病型・分類】

 後方脱臼が外傷性股関節脱臼の90%を占め,股関節屈曲位で長軸方向に外力が作用して発生する.いわゆるダッシュボード損傷である.大腿骨頭骨折は後方脱臼の6~7%に合併する.前方脱臼は本骨折の10%を占め,そのうち恥骨脱臼は股関節の外転・外旋・伸展により生じ,閉鎖孔脱臼は股関節の外転・外旋・屈曲により生じる.


問診で聞くべきこと

 受傷原因,受傷からの経過時間,疼痛部位を聴く.


必要な検査

 外傷性股関節脱臼は,単純X線の正面像・軸斜像で診断は容易である.合併する大腿骨頭骨折,大腿骨頚部骨折,寛骨臼縁骨折,寛骨臼底骨折,関節内骨片の診断には,閉鎖孔斜位像(obturator oblique view),腸骨斜位像(iliac oblique view)やCT scanが有用である.MRIは,bone bruiseや術後の大腿骨頭壊死の診断に有用である.


診断のポイント

 後方脱臼は患肢の短縮と股関節の内転・内旋が典型的な肢位である.しかし大腿骨骨幹部骨折を伴う場合は,典型的肢位を示さないので見逃される場合があるので注意が必要である.前方脱臼は患肢短縮に加え,恥骨脱臼では股関節伸展・外旋,閉鎖孔脱臼では股関節屈曲・外転・外旋を示す.


専門病院へのコンサルテーション

 股関節外科に対する対応が困難であれば専門医へ紹介する.


股関節脱臼に対する徒手整復

 大腿骨頭壊死の予防のために,脱臼整復は緊急を要する.麻酔下に筋弛緩薬を使用する.

【1】後

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