【疾患概念】
大腿骨転子下骨折は,小転子下縁から3cmもしくは5cm遠位の間に発生すると定義される.内側皮質には大きな圧迫力が,外側には張力がかかり,生体力学的に大きな負荷がかかる部位である.
【病態】
若年者では高エネルギー外傷,高齢者では骨脆弱性に伴う低エネルギーでの骨折が生じる.近年では非定型骨折も散見され,骨癒合が得られにくい.また転移性骨腫瘍の好発部位でもある.
いったん骨折が発生すると,周囲の強大な筋に牽引され,大きな転位をきたすことも特徴である.近位骨片は腸腰筋・小中殿筋・短外旋筋群の作用により屈曲・外転・外旋する.遠位骨片は内転筋の作用により内転・短縮転位する(図25-1図).
【病型・分類】
わが国ではSeinsheimer分類が用いられることが多い.骨片の数と部位・骨折線の方向により分類している.また,世界的にはAO/OTA分類が一般的である.
問診で聞くべきこと
受傷原因(