【疾患概念】
大腿骨骨折は,大きな外力か,極端な骨脆弱性が原因となるので,乳幼児においては虐待や骨脆弱性をもたらす基礎疾患の可能性を念頭に置いて診断を進める.一方,明らかな高エネルギー外傷が原因のときは,成長軟骨板の損傷の可能性を考慮して治療を行う.
【臨床症状】
一般に激痛と腫脹を主訴とし,体動困難となって救急受診するが,二分脊椎症などの麻痺性疾患や先天性無痛無汗症では激痛はなく,腫脹と発熱だけがみられる.
問診で聞くべきこと
基礎疾患の存在や過去の骨折歴を知るため,既往歴を確認した後に,受傷機転について詳細な問診を行う.この際,受傷時に誰が一緒にいたかについても問診しておく.少しでも不自然な点があれば虐待の可能性を考え,院内の専門委員会に調査を委ねる.高所転落事故の場合も,第三者による放り投げの可能性を考慮する.
必要な検査とその所見
交通事故などで受傷機転が明白な場合は局所のX線検査で十分であるが,虐待が疑われる場合は,全身の皮膚,粘膜の観察を行い,全身骨のX線検査を行う.骨脆弱性のみられる疾患の代表格である骨形成不全症が疑われる場合は,頭蓋骨のX線検査が最も有用で,wormian boneとよばれるモザイク状に亀裂が入ったような変化がみられたら,骨形成不全症の可能性が高いと考えられる.また,青色強膜も有力な参考所見となるが,健常児にもみられることがあるので注意を要する.
大腿骨頚部の骨折では,骨頭壊死が生じる可能性が高いが,初期にその判定を行うことは難しく,患肢の免荷を続けていくなかで,廃用性骨萎縮が起こらない部位があれば,その部位の血流が途絶されていると判定する.受傷後1か月ほど経過をみればおおむね判定できる.最終的には受傷後3か月時のMRIで確定診断できる.
大腿骨遠位部の骨端線損傷では,成長軟骨板の連続性が絶たれているかどうか評価することが重要で,これによって,どれ
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