診療支援
治療

人工股関節全置換術後の大腿骨骨折
Periprosthetic femoral fracture after total hip arthroplasty
高平 尚伸
(北里大学 教授/大学院医療系研究科 研究科長)

【疾患概念】

 人工股関節全置換術(total hip arthroplasty;THA)後の大腿骨骨折は,THAの治療成績の向上による適応拡大,高齢化人口割合の増加,初回人工関節年齢の低下などにより手術件数が年々増加傾向であり,発生率がさらに増えることが予測されている.術後の長期経過や高齢化による骨脆弱性や転倒リスクの増加によりリスクが高まる.使用可能なインプラントやスクリューの挿入方向などに制限があり,強固な固定が困難なことがある.

【頻度】

 発生頻度は初回THAおよび再置換術後では0.1~18%程度である.軽微な外傷によるものが多く,高エネルギー外傷は10%以下である.

【病型・分類】

 Vancouver分類(図25-7)Type Aは大転子部骨折Type AGと小転子部骨折Type ALに分類される.Type Bは最も頻度が高く,骨折はステム周囲に限局しており3つに分類される.Type B1はステムの固定性およびbone stockが良好,Type B2はステムの弛みはあるがbone stockが良好,Type B3はステムの弛みとbone stockの減少を認めるものである.Type Cはステムより遠位部での骨折である.

【臨床症状または病態】

 受傷機転は軽微な外傷が少なくないが,交通事故もある.症状は股関節部または大腿部痛,歩行不能,局所の腫脹や圧痛,可動時痛などである.


問診で聞くべきこと

 受傷機転,初回THA使用時のインプラント情報を聴取する.具体的には,セメント使用の有無,固定様式やコンセプト,ポーラスコーティングの有無や部位などである.不明な場合,元のメーカーがわかれば情報入手の可能性がある.骨粗鬆症の治療歴,処方中の薬剤名も聴取する.


必要な検査とその所見

(1)単純X線検査

 骨折線の有無を確認する.インプラントの弛みは,髄腔の開大,骨溶解,ステム先端の移動や沈下

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