【疾患概念】
非定型大腿骨骨折は,大腿骨転子下から骨幹部に発生する横骨折であり,転倒などの軽微な外力で生じ,誘因となる外傷がないことも多い.本骨折は,骨粗鬆症に対してビスホスホネート薬を長期間使用した例に生じやすく,治療に難渋する例が多いことから,その主因は,骨代謝回転の極度な抑制であると考えられてきた.しかし,近年の研究により,骨代謝回転は必ずしも抑制されていないことが明らかとなった.
ビスホスホネート薬以外にも,ステロイド薬,デノスマブ薬,プロトンポンプ阻害薬などが本骨折に関与すると考えられるが,これらを裏付ける質の高い研究は少ない.また,骨幹部に生じる本骨折には,大腿骨の弯曲が大きな例が多い.
【頻度】
発生率は,人口10万人・年あたり3.2~50例と推定される.
【病型・分類】
完全骨折と不完全骨折に分類され,骨折部位により転子下骨折と骨幹部骨折に分けられる.
問診で聞くべきこと
骨折が生じる前に,鼡径部や大腿部に痛みが生じることがあるため,このような前駆症状がないかを確認する.
必要な検査とその所見
単純X線像による診断が困難な不完全骨折は,骨シンチグラムによる骨折部の異常集積像やMRIの輝度変化で診断する.本骨折は両側に発生することが多いため,片側例では対側の評価も必ず行う.
診察のポイント
本骨折の診断には,2014年に提唱された米国骨代謝学会のタスクフォースレポートによる定義が用いられる.すなわち,「大腿骨小転子直下から顆上部の直上までに生じる骨折」において,「5つの主な特徴のうち,少なくとも4つを満たす」必要がある.5つの主な特徴とは,①外傷なし,あるいは立った高さ以下からの転倒などの軽微な外力で生じる,②骨折線は外側の骨皮質から生じて横走するが,内側に骨折線が及ぶに従って斜めになる場合もある,③完全骨折では両骨皮質を貫通し内側にスパイクを認めることがあり,不完全骨
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/デノスマブ(遺伝子組換え)《ランマーク》
- 治療薬マニュアル2024/テリパラチド(遺伝子組換え)《フォルテオ》
- 今日の整形外科治療指針 第8版/肘関節の離断性骨軟骨炎
- 今日の整形外科治療指針 第8版/Monteggia骨折
- 今日の整形外科治療指針 第8版/有頭骨骨折
- 今日の整形外科治療指針 第8版/脛骨顆間隆起骨折
- 今日の整形外科治療指針 第8版/Sever病,Köhler病,Freiberg病
- 今日の整形外科治療指針 第8版/距骨骨折
- 今日の整形外科治療指針 第8版/中足骨疲労骨折
- 今日の整形外科治療指針 第8版/内果疲労骨折,舟状骨疲労骨折
- 今日の整形外科治療指針 第8版/Os subfibulare障害, Os subtibiale障害, Os peroneum障害
- 今日の小児治療指針 第17版/骨形成不全症