診療支援
治療

膝関節周辺の痛みのとらえ方/診断手順
Clinical and anatomical diagnosis of knee joint pain
池内 昌彦
(高知大学 教授)

 膝関節周辺の痛みを訴える患者を診察する場合,一般的には痛みの局在と膝関節の解剖を照らし合わせて想定される疾患を念頭に検査を進めるとよい.また,痛みを正確に捉えるためには,局在以外にも,強度や質,時間的変化なども評価することが重要である.


1.診断手順

【1】病歴聴取

 膝のどこが,いつから,どのように痛むのか,詳しく聴取する.また,外傷やオーバーユースなどの発症誘因,運動や食生活などの生活習慣,家族構成や職業などの社会的背景,既往歴や併存症などの情報も重要である.さらに,膝関節の不安定感や膝くずれ(giving way),ロッキングなどの痛み以外の症状も聴取しておく.これらの情報は初診時を逃すと得られないことが多く,時間はかかるが初診時に丁寧に聴取することが望まれる.問診表にこれらの情報に関する質問を盛り込んでおくと外来診療が効率的になる.

【2】身体所見

(1)歩容を観察し跛行がないかどうか確認する.また,膝関節機能に大きな障害がないかどうか確認するために,しゃがみ込み動作をしてもらうとよい.次に,立位の状態で下肢アライメントを評価する.内反,外反,屈曲拘縮や過伸展の有無を視診で確認する.膝蓋骨が正面を向いていない場合には回旋アライメントの異常を疑う.

(2)診察台の上に仰臥位で寝てもらい,膝関節の診察を進める.初診のときは必ずショートパンツに履き替え靴下を脱がせて,下肢全体を診るようにする.

 ①視診:再度下肢アライメントを評価したのちに,関節の腫脹や変形,脚長差や筋萎縮の有無について確認する.次に自動屈伸をしてもらい,可動域制限や伸展ラグ,膝蓋骨トラッキング異常の有無を診る.屈曲90°では脛骨落ち込み徴候(posterior sagging)を確認し,陽性なら後十字靱帯損傷を疑う.

 ②触診:熱感や腫脹,膝蓋跳動の有無を確認する.膝前面だけではなく膝窩部も注意して触診を行う.Bak

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