【疾患概念】
膝蓋骨骨折は,全骨折の1%を占めており,その年間発生率は10万人あたり13人とされている.膝蓋骨は大腿四頭筋による膝関節伸展力を効率的に働かせるlever armの役割を担っているため,偽関節や変形癒合は疼痛のみならず機能障害を引き起こす可能性がある.
【病態】
本骨折は直達外力,介達外力,またその合併により発生する.直達外力による骨折は膝の前方からの打撃を含め転倒や,交通事故,転落などで起きる.小児のsleeve fractureのように大腿四頭筋収縮による介達外力でも起きる.
骨折型に基づいて①転位のない横骨折,②転位のある横骨折,③下極ないし上極の骨折,④転位のない多骨片(粉砕)骨折,⑤転位のある多骨片(粉砕)骨折,⑥縦骨折,⑦骨軟骨骨折の7つのタイプに分類される.
【臨床症状】
膝蓋骨上の圧痛を認める.転位した膝蓋骨骨折では,急性の関節内血腫をきたし,骨折部の陥凹が触知される.また膝伸展困難ないし不能となることが多い.
必要な検査とその所見
(1)膝単純X線
正面像では骨折の形態,骨折線の方向などを,側面像では骨折部の離開の程度,関節面の適合性などをみるのに役立つ.膝蓋骨軸写像は縦骨折の描出に優れている.
(2)CT
骨折の詳細を把握することができるため術前評価に有用である.
(3)エコー
転位がなく単純X線のみでは同定しにくい骨折も描出することが可能であり,簡便かつ有用な検査である.
鑑別診断で想起すべき疾患
(1)分裂膝蓋骨
骨化異常などが原因とされている,膝蓋骨が2つ以上に分裂している病態である.分裂膝蓋骨では分裂部辺縁が鋭的ではなく丸まっており,近位外側に位置するSaupe分類のⅢ型が最も多い.
診断のポイント
明確な受傷機転の有無について確認することにより,比較的容易に診断をすることができる.
治療方針
骨折部の転位を認める場合は手術適応になる.骨折部のstep