診療支援
治療

側副靱帯損傷
Collateral ligament injury of the knee
古賀 英之
(東京医科歯科大学大学院 教授(運動器外科学))

【疾患概念】

 膝側副靱帯損傷は大きく内側側副靱帯(medial collateral ligament;MCL)損傷と,外側側副靱帯(lateral collateral ligament;LCL)および後外側支持機構(posterolateral corner;PLC)損傷に大別される.両者ともに新鮮単独損傷例や部分損傷例,大きな愁訴を伴わない陳旧例については一般的に保存療法が選択され,良好な経過をたどることが多い.一方で愁訴を有する陳旧性靱帯損傷や複合靱帯損傷に伴う損傷に対しては手術的治療が選択され,近年の鏡視下手術の進歩,個々の靱帯の解剖学的理解やバイオメカニクス研究の積み重ねによる再建術の治療成績の向上に伴い,積極的な手術的治療の選択により良好な成績が得られるようになってきている.本項では最初に頻度の圧倒的に多いMCL損傷について詳細を述べ,その後LCLおよびPLC損傷について概説する.


1.MCL損傷

【病態】

 MCL損傷は膝関節靱帯損傷のなかでも最も頻度の高い外傷であり,主にコンタクトスポーツやスキーなどで多発することが知られている.受傷機転としては,ラグビーやアメリカンフットボール,ホッケー,柔道などのコンタクトスポーツで膝外側からの直達外力が加わることによる接触性損傷と,上述のスポーツやサッカー,スキーなどにおけるジャンプ着地やストップ,ターン動作による非接触性損傷が挙げられる.2度以上の損傷や十字靱帯損傷を合併した場合にはpop音を聞くこともある.いずれの場合も主に外反力により生じることが多い.


問診で聞くべきこと

 スポーツの種類や受傷機序(接触性か非接触性か,外反損傷か),視診や触診による症状の部位や性質などが診断や治療方針の決定に重要である.

 急性期には視診にて膝内側に腫脹を認める.MCL単独損傷では関節内血腫は通常ないか,あっても少量であるが,十字靱帯の合

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